がん患者のイタリア漫遊記(5)

早いもので、イタリアで過ごす最後の一日となった。ホテルにスーツケースを預け、ジェノヴァの街を散歩する。

(ホテルのすぐそばの立体交叉=Ponte Monumentale)

(名も知らぬ路地をひたすらほっつき歩くのがぼくの旅のスタイル)

「コロンブスの生家」という(一応)名所があって、妻が見たいというので歩いていった。

(向こうに見える城郭風の建物はソプラーナ門)

旧市街からソプラーナ門を抜けた、新市街との境目に古ぼけた一軒の家があった。これが「コロンブスの家」で、アメリカ人らしい観光客がしきりに記念撮影をしている。といってもただの家なので、ぼくは撮る気にならなかった。

(ぼくが好んで撮るのは例えばこんな風景だったりする)

ぼくの勝手な印象で言えば、ミラノやローマは観光スポットという「点」を道路の「線」で結んだ、言わば「点と線」の街である。それに対してフィレンツェやジェノヴァ、ヴェネチアは、
路地が入り組む「面」の街で、散歩好きのぼくにはこうした街の方が愉しい。チンクエテッレに至っては、路地の急坂を登ったり降りたりだから「3Dの街」だ。夫婦というのは似てくるものなのか、歩くのが苦手なはずの妻もジェノヴァやチンクエテッレが好きだという。

ジェノヴァの印象がいいのは食べ物が美味しい点も大きい。やはり「upim」の加藤さんの推選リストにあったIl Genoveseという店で昼食をとる。ジェノヴァ・ブリニョール駅から近い繁華街にあるが、これも地元の人たちに愛されてるらしい活気溢れる店だ。

(ジェノヴァの地ビール・Maltus Faber)

喉が渇いたので白ビールがないかと注文して出てきたのがこれ。ジェノヴァの地ビールだというが、香りがよく、とてもおいしい。

(妻が喜んで食べたのはリグリア風ミネストローネ)

昨夜に続いてジェノヴェーゼと、ペストソースのスープ(ミネストローネ)を注文した。ともに、大変おいしい。遠い異国の地から加藤さんに感謝する。

午後の列車でミラノに戻る。日が長いので、しばらく散歩。妻が妹から頼まれた買物をすませ、街角の楽士が奏でる音楽に耳を傾ける。

(サンドロ・ベルティーニ記念碑前の広場にて)

シロフォン(木琴)の奏者がなかなかの芸達者で、ヴィヴァルディの「四季」など愉しく聞かせてくれた。妻が、彼らの前に置いてある帽子に5ユーロ札を入れた。宿泊は最初と同じホテル・ベルナで、今度は通りの向かいにあるオートロック付きの新館なので、一泊27000円と結構お高め。部屋が広く落ち着いて過ごせると妻は喜んでいた。こちらの部屋の洗面所にもアヒル君がいたが、2羽持って帰ってもしょうがないので残していくことに。

夕食はホテルのすぐそばにあって初日の夜に食べておいしかったOsteria Papà Nicolaで。この店は加藤さんのリストではなく、自分で捜した店だ。イタリアのGoogleMapは、レストランの表示をクリックすると「お客様の声」が出る。食べログみたいなものである。Osteria Papà Nicolaは4.7とこの界隈ではひときわ高得点だった。ただし、Google翻訳による日本語を読むとアタマが痛くなる。

中央駅周辺に私たちイタリア人のためのレストランがあります。大半が観光客向けのレストランだからこそ彼は私たちを望んでいたのです。誰かが私たちについても考える時が来ました。
戻ってくる。

私は私の昼休み、私の良さの間にほとんど偶然にそこに着いた!誰かが料理に情熱を注いだときにそれが表示されます。次回は私が同行します

私は友人と昼食のためにパパニコラに会いに行きました。すべて非常に良い、特に枕に包まれたガンベロニ!…フレンドリーで親切なスタッフ!私は間違いなく戻ってきます!

「枕に包まれたガンベロニ」ってなんやねん?(ガンベロニはイタリア語で中型のエビのことらしい。)ぼくの日本語までおかしくなってしまいそうだ。それでも、みんな褒めていることと、また来たいと言っているらしいことは読み取れる。実際、ガラス越しに店内をうかがうと、大変活気のある店だ。何人かのウェイターが吹っ飛んで歩いている。

(前菜はイカとタコの料理をひとつずつ注文した)

イタリアを旅していて嬉しいのはシーフードのおいしさ。特にイカ・タコ類を好んで食べるので日本人には親しみやすい。Osteria Papà Nicolaは、イタリアのどの地方の郷土料理なのか。ミラノなどロンバルディアとはちょっと違う気がする。海産物が多く、チンクエテッレやジェノヴァなどリグリア海沿岸の食堂と共通するものを感じる。

(シーフードのラビオリ。ちょっと食感がモサモサしている)
(シュリンプとプラウンのグリル)

エビ好きの妻はシュリンプとプラウンのグリルを注文。英語で言うShrimpとPrawnとどう違うのかぼくにはよく判らない。食べてもやっぱりわからない(笑)。

6日間のイタリアの旅を終えて妻と二人で話したのは、フィレンツェは何度でも訪れたい街、チンクエテッレとジェノヴァにも必ずまた来てみたいということ。加藤さんのおかげで、もう一度食べたいレストランも複数ある。そうすると、結局、今回とほぼ同じルートになってしまうではないか(笑)。
また来る日まで、ぼくが元気でいられればいいのだが。









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