がん患者のイタリア漫遊記(1)

大型連休を利用してイタリア旅行に出かけた。
定年後に静養生活を送っているぼくには〝毎日が日曜日〟だが、鍼灸院を経営している妻は忙しく、一週間程度の海外旅行をするにはこの時期をおいてない。イタリアに行くのはぼくの〝定年旅行〟以来三年ぶり二度目で、他に行きたい国もあるが、やっぱり食べ物が美味しいイタリアを選んだ。体の中に癌という時限爆弾を抱えているぼくには、毎日が一期一会、食べられるときに食べ、楽しめるときに楽しむつもりだ。

成田〜ミラノのアリタリア航空直行便での往復。予定を十連休にぴったり入れると価格が高くなるので、5月1日出発、8日に帰国とちょっとずらした。脚に血栓ができやすくなっているとの医師の言葉もあり、空席に入札をして(アリタリアにはそんなシステムがある)ビジネスクラスにランクアップした。アリタリアのビジネスはワインが旨い。窓際の席ではなかったが、イタリアが近づいたので空いている席に移って外を見ると、眼下に雪を頂いたアルプスの山々が見えた。

(アルプスであるのは確かだが、山の名前までは判らない)

圧倒的な迫力に息を呑む。切り立つような山容の厳しさが日本の山とはまるで違って見えた。

ミラノ・マルペンサ国際空港到着は現地時間の18時15分。入国手続きをすませ、バスでミラノ中央駅に向かう。空港から市内まではバスで一時間ほどかかるので暗くなってからの到着を予想していたのだが、まるで明るいので拍子抜けをした。

(ミラノ中央駅・午後7時47分)

東京で言えば、夕方までいかない、遅い午後の斜光だ。この時期の北イタリアは夜の9時頃まで明るいのである。ホテルは中央駅から徒歩3分ほどのホテル・ベルナ。2泊で2万円ほどで、安い。

(ホテル・ベルナのアヒル君は無料のイタリア土産になった)

部屋に入るとビニール製のアヒルが「ぼくをおうちに連れてって」と主張しているので、妻に呆れられながら日本に連れて帰ってあげることにした。このアヒル、なぜかドイツ製である。

翌日は一日かけてミラノ市内の散策。ホテルから有名なドゥオーモまで徒歩30〜40分ぐらいだろうが、途中、ショップが軒を連ねる商店街で、妻がほぼ一軒ごとに引っかかるのでなかなか進まない(笑)。ぼくは歩くのは平気だが、買物につきあうとすぐ疲れる。しかし、今回は、
腹膜内にできた癌が内臓を圧迫し胃腸の動きが悪くなりがちのところを、妻が朝晩、鍼やマッサージでほぐしてくれている。だから、イタリアに来ても体調は良好。弱みがあるので、大人しく買物につきあうことにする。妻は結果として何も買わなかったのだが、見ているだけで楽しいらしい。そんなものか。

(特に観光スポットでもないらしいアパート。住んでみたくなる)

イタリア第二の都市・ミラノは公園が多く緑の多い街である。住みやすいだろうと思うが、
整備され過ぎていて、カメラ片手にほっつき歩くにはあまり面白い街ではない。

(ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア)

ミラノにきた観光客は誰でも訪れるというヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア。
ガッレリアとはアーケードというぐらいの意味で、19世紀にイタリア王国の初代国王、エマヌエーレ2世の命で作られたものだという。このアーケードにはプラダなどの一流ブランドが出店している。

(超有名な観光スポット。ローマのトレビの泉のようなものか)

交差点の舗道に描かれた牡牛の絵の上で、観光客が踵を中心にぐるぐるまわっていた。ここで〝三回まわってワン〟をすると願いが叶うとかなんとか言い伝えがあるらしい。

(アーケードを抜けるとドゥオーモ前の広場にでる)

アーケードを抜けると超有名な世界遺産のドゥオーモがある。正確には、サンタ・マリア・ナシェンテ教会という。ゴシック様式の豪壮な建物で、500年がかりで完成したものだという話である。最後はナポレオンがフランス政府の予算で完成させたというのがちょっと意外だ。

(半パンやノースリーブ、帽子をかぶっての入場は禁止)

ぼくは宗教心をまるで持たないタイプだが、こういう建物に入るとさすがに厳粛な気分になる。

               (屋上には徒歩ないしエレベーターで上がる。ともに有料)

もっとも一番好きなのは、こうした得体の知れない怪物たちだったりする。エレベーターで屋根に上がったら、たくさんいた。ガーゴイルと呼ばれ、雨樋を兼ねて作られたものらしい。






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