観測史上最低気温というけれど…

釧路は昨日、
最低気温が−22.7℃と観測史上の最低記録を更新したという。
ただ、天気がよかったので、
南向きが全面窓の我が家では
昼間はストーブをつける必要がなかった。
釧路で生活している人間の実感として言わせていただければ、
問題は気温ではなく「風」である。
一般に風速1mで体感気温が1℃下がるといわれているが、
ぼくの実感で言えばもっと違う。
風が強かった一昨日などは、
外を歩いていると耳が引きちぎられそうに感じたものだが、
無風のきのうはむしろ暖かく思えたほどだ。

久しぶりに夕方、幣舞橋から釧路川の岸壁を歩いた。
しばらく東京や東北に行っていたり、
釧路にいても天気が悪かったり体調がイマイチだったりして、
夕陽を撮るのは随分久しぶりである。


冷え込みが厳しかったことを感じさせるのは、
川面に浮かんだ「蓮の葉氷」である。
上流で張った氷が割れて下流に流れてくるものだ。
観光客はよく「流氷だ!」といって大喜びしているが、
遙かオホーツクから流れてくる流氷とは別物である。
第一スケールがまるで違う。
流氷は直径が何メートルもある巨大な氷塊だから。
でも、せっかくの夢を壊すのも気の毒なので黙っている。

幣舞橋は夕日を見物する観光客で賑わっていた。
最近の釧路は中国人観光客の姿が目立つが、
とりわけこの日は、
周囲から聞こえてくるのは圧倒的に中国語だった。


あ、そうか、
彼の地は春節(旧正月)の長期休暇だとすぐに思い当たった。
今年は確か2月5日が旧暦の元日だったはずで、
中国では10日ほど連続して休むのが一般的である。
現在のところ(中国から見た)海外旅行の一番人気はタイで、
日本は第2位につけている。
その日本のなかで圧倒的に人気があるのが北海道である。
中国人観光客のいわゆる「爆買い」が一段落した頃から、
釧路を訪れる人たちが増えてきたように思う。
インバウンドはモノからコトの消費へ、
とはよく言われるところだが、
釧路にはきっと厳しい寒さを楽しみにくるのだろう。
だから、日本人観光客に比べて行動の積極性が目立つ。
平たく言えば、寒いところにどんどん出ていくのである。


実は、言葉を聞かなくても、中国人か日本人かはすぐわかる。
写真を撮るときのポーズが違うのである。
日本人は如何にも記念撮影、という感じでカメラに正対する。
少し照れ臭そうに写真に収まる人も多い。
ところが中国の人たちは違う。
重心をどちらかに傾けてみたりして、凝ったポーズを決める。


カメラに背を向けて、ちょっと見返り美人を気取る人も多い。
夕日をバックに自撮りを試みる人も目立つ。
上の写真で欄干に背を向けている人たちの大半はそうだ。
照れている人の姿は見たことがない。
特に若い女性たちは
みんなモデルか女優さんみたいにポーズをとる。
そして、寒い吹きッさらしの場所にもどんどん出ていく。
この季節だと
幣舞橋から岸壁を河口方面に歩いたところが
撮影のベストポジションだが、
先に行けば行くほど、
(ぼくのように)カメラバッグを抱えた写真好きの日本人と
中国人観光客ばかりになる。
最初はこんなところまで、と驚いたが、
寒さをとことん愉しんでやろうとでもいうような
彼らの貪欲さにはいつも感心させられる。


夕日が沈んだ後、残照が淡く染まった。
ぼくは夕日そのものより、
むしろマジックアワーの空気感が好きなので粘る。
陽が沈むと日本人観光客はさっさと消えるが、
中国人には岸壁で頑張っている人も少なくない。


陽が沈んだ後はさすにじんじんと底冷えがしてきたので、
ぼくはMOO(河畔にあるショッピングセンター)で
手作りのソーセージを買って帰った。







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