田舎暮らしの〝こだわり〟

何かと〝こだわり〟の多い人間である。
いや、自分のことだ。
これはこうでなきゃいかん、とか、
「いいもの」とはこういうものをいうのだ、とか…。
結婚当初は、ずいぶん妻に面倒臭がられた。
最近では諦めているようだが。

ゆえあって現在、妻と別居中(仲が悪いワケではないw)。
だから、基本は三食自分で作って食べる。
そのためにほぼ毎日、買物に出る。
この買物に関しても〝こだわり〟がある。

まず、買物は個人商店か地元資本のスーパーでする。
イオンは地域経済と地域社会の破壊者だと思っているので、
こうした大手スーパーでは買いたくない。
食品、特に野菜や果物は可能な限り国産品を買う。
にんにくは青森産、生姜は高知産と決めている。
レモンなら広島産か愛媛産というところか。
安価な中国産のにんにくや生姜は
安全性が不安だから…というわけではない。
(アメリカ産のレモンには多少そういう側面もある。)
できるだけ日本の農家を応援したいのである。
生産者である農家は、
同時に日本社会を構成する消費者でもある。
安いからと言って輸入食料に飛びついてばかりいたら、
日本国内の経済規模が縮小して結局は共倒れになると思う。
同じ理由で豚肉や鶏肉は国産品、それも北海道産を買う。
しかし、牛肉だけは例外で、
和牛(霜降り肉)はおいしいとは思わないので買わない。
ステーキが好きなぼくは、
肉の旨味を感じるオーストラリア産の牛肉を買う。
それも可能ならグラスフェッド(牧草で育てた牛)の肉がいい。
世界には飢えている人が少なくないのに、
人間の食物でもある穀物を大量に牛に食べさせ、
カロリーの縮小再生産を続けるべきではないと思うから。
もっとも、同じ輸入肉でも、
スーパーなどでよく見かける安いアメリカ産はダメ。
不味すぎて話にならない。

加工食品や調味料は、
国産品でも大メーカーのものはできるだけ避けたい。
〝食〟の質は多くの場合、量と反比例する。
大量生産では良質の食品は作れないとぼくは考えている。
スーパーの調味料売場をのぞいてみるとわかるが、
例えばポン酢や麺つゆで
化学調味料を添加していないものを探すのは極めて難しい。
醤油も大メーカーのものはまず例外なく速醸法によるもので、
昔のように
もろみを2〜3年寝かせて作ったものはまず手に入らない。

(有機栽培の丸大豆を原料に伝統製法で作る小豆島の丸島醤油)

要するに食生活が
すべてにおいて〝インスタント化〟しているのだ。
漬物や梅干しもほとんどは化学調味料で味を補い、
添加物で保存性を高めたものばかり。
地方の小さな食品加工業者のなかには
昔ながらの方法できちんと作っているところがあるので、
できるだけそういうものを買う。

(化学調味料、添加物を使用しない愛知県・日東醸造の三河白だし)

その方が味もいいし、
微力ながら
日本の優れた食文化を次代に伝えるお手伝いがしたいのである。

ところが、
そういうぼくの〝こだわり〟が、
〝こだわり〟同士で矛盾するのが悩みだ。
調味料や漬物を例にとれば、
東京なら我が家から歩ける範囲に何軒かの自然食品店があり、
デパ地下や高級スーパーを探せば見つかることも多い。
しかし、
釧路のような人口20万人弱の地方都市では、まず不可能である。
いくら地元の個人商店やスーパーで買いたいと思っても、
そこには欲しいものがないのである。
結果として、
地元で買うのは生鮮品を中心としたごく限られたものになる。

不思議なことに、
かなりの田舎町でもおいしい豆腐屋の一軒や二軒はあるものだ。
釧路であれば「増子豆腐店」という家族経営の店がいい。
十勝産大豆を原料にしたもので、一丁260円と高いが、おいしい。
コーヒー豆は「舟木米穀店」で買う。
その名の通り家族経営の米屋さんだが、
なぜかコーヒー豆の自家焙煎を行なっている。
250g1620円とこれも高めだが、香りがよくおいしい。
妻がわざわざ東京に買って帰るほどだ。
水産加工品や乳製品を買うには、
釧路に住んでいるのは大きなアドバンテージになる。
イクラやタラコなどの魚卵、
柳葉魚などの干し魚であれば和商市場の「丸栄田村」。
もう二十年ぐらい、ここで買っている。
チーズはやはり和商市場の「マルシェ釧路」で、
地元の厚岸や白糠産のチーズが買える。
チーズの味は牛に与える餌に大きく影響される。
大規模経営の酪農家ではどうしても効率重視の給餌になるので、
こうした原料乳では美味しいチーズはできない。
根釧十勝は大規模酪農地帯だが、
こだわりの営農を続ける小規模牧場もあって、
そうした牧場で作る乳製品を食べられるのは幸せなことだ。

しかし、生鮮品やこうした一部の加工食品を除くと、
結局、ネット通販に頼るしかないのも地方生活の現実である。
ぼくの場合、
かなり以前から下着を除く衣服はネットで買うようになった。
釧路のみならず地方都市では書店は壊滅状態だから、
本もネットで注文する。
ここ数年は、調味料もほとんどはAmazonで買っている。
Amazonが地方の小さなメーカーが作っている醤油やみりん、
ポン酢などを揃えているのはちょっとした驚きだった。

(すだち果汁、ゆず果汁と一番だしで作る岐阜県・内堀醸造のポン酢)

通販もできるだけ日本の会社を使いたいのだが、
単価の安い調味料を買うには楽天だと送料が高くつき過ぎる。
どんなに安いものでも送料ゼロで送ってくれる
ヨドバシ・ドットコムはぼくの釧路生活の大きな支えだが、
(こう書いているさなかにも、
 貝印の野菜の水切り器・1310円が届いた)
調味料などの食品については品揃えがいまひとつだ。
(最近、少しずつ充実してきた気もする。)

去年の暮れには、
年越し蕎麦(ぼくの故郷の出雲そば=「一福」の生そば)、
おせちのローストビーフを作るのに使う牛肉を楽天で買った。
牛肉はオーストラリア産で、それもグラスフェッド。
おいしいオーストラリア産牛肉は
東京でもなかなか置いている店が少ない。
それを「ミートガイ」という店で買うことができた。
玉葱やにんにくのすりおろし、醤油などで調味液を作り、
肉をよくもみ込んだうえ一晩漬け込んでおき、
愛用の「バーミキュラ」の鍋でじっくり焼いた。

(おいしい御飯も炊けるバーミキュラの鍋、手前が直径14cm、奥18cm)

「バーミキュラ」は
「愛知ドビー」という会社が作っている鋳物ホーロー鍋で、
これも通販で半年以上待って手に入れたもの。
大ヒットして生産体制が充実したのだろう、
最近はすぐに手に入れることが出来るようになったらしい。

(オーストラリア産リブロースのローストビーフ。赤ワインにあうw)

いままで作ったローストビーフのなかで最高の出来だった。
一緒に買ったステーキ用のヒレもおいしかったので、
きっと同じ店でリピートすることになるだろう。

できるだけ地元の店を使おうと思いながら、
ネット通販抜きにいまのぼくの生活は成り立たない。
それが現実なのだが、
考えようによっては田舎暮らしの可能性を広げるものでもある。
地元ならではの質のいい食材と
通販で買う〝こだわり〟商品を組み合わせることで、
東京にいるより
遙かに豊かな生活ができるということに他ならないのだから。

コメント

  1. 僻地外科医2019年1月22日 12:20

    お久しぶりです。
    私も20年以上マルシマの濃口醤油を使ってますよ。下川での勤務時代、名寄の自然食品店で見つけたのが最初で、その後札幌の旧ロビンソンに入っていた自然食品店などで購入していましたが、今は無くなってしまったのでケンコーコムの通販で購入しています。
    ケンコーコムの方がamazonより安いですが、primeに入っているので送料を考えたら似たようなものかな?ヨドバシよりは明らかに安いです。
    マルシマにもいろいろな製品がありますが、薄口醤油はほぼ白醤油しか使わないので買わず、杉樽仕込みの醤油は香りが強すぎて使わず、減塩醤油は味が薄すぎるので使わず、、、で、濃口醤油の一般品だけを使っています。

    調味料にはかなりこだわっていて
    白醤油は本むらさき株式会社の白むらさき。製法自体は愛知の白醤油の方が良いものが多いのですが、全般に塩分が高すぎて使いにくいのでこの会社のものを使っています。
    塩は食卓塩的に使うのは赤穂の焼塩。もっと良いものもありますが、その辺のスーパーで手に入るものとしてはベストです。調理に使うのは五島灘の塩。クエン酸鉄アンモニウムを加えたもので本物の天然塩ではありませんが、近場のスーパーで手に入りやすく、味が柔らかくて使いやすいです。

    味醂は岐阜の 味美泉1年熟成。美瑛の土井商店で購入していましたが、先頃土井商店が旭川に移転してしまいました。

    ポン酢は自家製。馬路村から食塩無添加のゆず果汁を取り寄せ、マルシマの醤油、味美泉、鰹節(これは市販のパック)、利尻昆布で作っています。半年に1回、1度に8リットルほどを作って半年でほぼ使い切ります。

    あとは唐辛子の一味、七味を京都の山城屋から取り寄せるぐらいですね。

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  2. 僻地外科医先生。
    すっかり御無沙汰しています。
    書き込みに気づかず、返信が遅くなりましたことをお詫びします。
    で、その返信ですが…
    先生がお読みになっているのに料理の話を書いたのは早計だったw
    ということに尽きます。
    ぼくもポン酢を手作りすることはありますが、
    一度に8リットルなんて、スケールが違い過ぎます。

    返信削除
  3. 僻地外科医2019年2月3日 15:40

    >一度に8リットルなんて、スケールが違い過ぎます。

    大量に作るのは理由がありまして、、、。
    まず、ゆず果汁の送料がけっこう高いんですよ。なので、少量生産だと単価が上昇してしまうというのが1点目。
    2点目は某事務長時代(昨年退職しました)から続く院内宴会がそれなりの頻度であり、ポン酢の消費量も半端ないんです。半年で8リットル使い切る頻度ですから想像が付くかと思います。
    3点目。ポン酢の容器にはミネラルウォーターのペットボトルが一番使い勝手が良い(中の液体に味が付いていない、清潔)ので、中身のミネラルウォーターをつかってポン酢を作る度に鶏ガラスープを取ってます。これもやはり少量だと手間が大変、という理由です。

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