遅い春の記録

北国・釧路の春は遅い。
例年、桜が咲くのが5月中旬から下旬にかけてになる。
日本列島の桜前線は釧路まできて消滅するのだ。
その釧路のなかでも我が家の春は特に遅い。
海風がまともに吹きつける高台にあるためか、
例年、近所で花が咲き始めても、我が家ではまだ蕾のままだ。

去年の春から、
抗がん治療を釧路の病院に移し、
静養を兼ねて釧路で過ごす時間が長くなった。
毎日のように庭に出て、春の訪れを記録し続けている。


5月12日、イタヤカエデが芽吹いた。
数年前に植えたまだ若い木で、
ようやくぼくの背丈と同じくらいの高さに成長した。
毎年、この木が我が家に春の訪れを告げる。


5月18日、クロフネツツジが蕾になろうとしていた。


5月20日、イタヤカエデの若葉。
イタヤカエデの若葉は紅い。
これがやがて緑色になり、秋にはまた紅くなって枯れ落ちる。


5月21日、我が家の庭に若い雄ジカが遊びにきた。
群れから離れて大人になるための修業中なのだろう、
最近、このあたりの住宅街に出没している。
先日は近所のアパートの裏庭にいるのを見た。
慌ててカメラを持ち出して、
裏のお宅の脇まで移動したのを追いかけて撮影。
人間の存在を気にしてはいるが、怖れる気配はない。
角が伸びてきたら、ちょっと厄介かもしれない。


5月23日。
釧路の春はタンポポの季節だ。
39年前の6月、
駆け出しのTVディレクターとして釧路に着任したぼくは、
街を覆う一面の黄色い絨毯に一目惚れした。
ぼくが釧路に住むことになったきっかけはその日まで遡る。
この写真は我が家ではなく、
通っている病院の近くにある公園。
綺麗だったのでiPhoneのカメラで撮影したもの。
思えば、去年も同じ公園でタンポポを撮っている。
我が家の庭にもたくさんのタンポポが咲くが、
さすがに公園だとスケールが違う。


5月25日の朝は雨だった。
昼前に上がったので、
イタヤカエデの若葉についた雨滴を狙ってみた。


5月26日、クロフネツツジが最初の一輪を咲かせた。
大ぶりの美しい花である。
去年より2日早い開花だった。
庭にはクロフネツツジが二株あるが、
もう一株は葉を茂らせるだけで花をつける兆しがない。
どうしたのだろう?
1日遅れて、家の南側に植えたツツジも咲いた。


5月31日、きのうは早朝に豪雨。
雷鳴と凄まじい稲妻で目が覚めた。
雨は一日中しとしと降り続けた。


家の南側に植えたツツジが雨に打たれてうなだれていた。
例年ならこのツツジが最初に花をつけるのだが、
今年は去年に比べて2週間以上も遅い開花だった。


きょう(6月1日)は一転していい天気になった。
庭に何種類か植えたツツジのなかで、
最後に咲くのがこの白躑躅。
ようやく蕾を膨らませ始めた。
きっとあと4〜5日で咲くのだろう。


家の北側に植えたヤマモミジも若葉を開き始めた。
春本番が一気にやってきた。


すっかり日が長くなった。
夕暮れの光のなかで
クロフネツツジは花の盛りを迎えている。


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