阿寒摩周国立公園(今年からそう呼ぶようになった)の一角にオンネトーという湖がある。
アイヌ語で「年老いた湖」とでもいったところだろうか。釧路から見れば雌阿寒岳のちょうど裏側に当たる、周囲2.5kmほどの小さな湖である。
「阿寒の宝石」「五色沼」などと呼ばれることもある。ぼくはこの小さな湖が同じ国立公園にある阿寒湖、屈斜路湖、摩周湖よりも好きだ。摩周湖は確かに美しいが、展望台から眺めればおしまいで基本的に「一枚絵」の世界である。その点、オンネトーは湖を一周歩いてまわることができるのがいい。木道がかなり傷んでいるので、それなりの足拵えは必要だが…。
「五色沼」とも呼ばれるように気象条件や見る角度によって湖面の色が刻々と変わっていく。
あるときはエメラルドグリーンであり、またあるときは深く澄んだ青色をたたえているように見える。水質は酸性で魚はあまりいない。こうした色あいは火山湖の特徴なのだろうと思う。
ぼくはかつて何度もこの湖にきた。湖畔のキャンプ場で独り、一晩を過ごしたこともある。しかし、いつ頃だっただろうか、阿寒湖畔とオンネトーを結んでいたバスが廃止になり、車の運転をしないぼくは来られなくなってしまった。なぜかいまは阿寒摩周国立公園を巡る定期観光バスのルートからも外れている。せっかく美しい湖なのに…。
ながいあいだ訪れていなかったオンネトーだが、秋のベストシーズンのうちにぜひとも行きたくなって、阿寒湖畔から宿泊予定の野中温泉までタクシーを走らせた。片道5700円…“金なき子”のぼくとしては痛いが、矢も盾もたまらなかった。野中温泉からオンネトーまでは歩いて30分、写真を撮りながら湖を一周して3時間ほども歩いただろうか。
ちょうど紅葉が盛りの季節を迎えていた。ただし、湖の周辺には針葉樹が多く、全山真っ赤に染まる…という風にはならない。赤や黄色がスポットのように湖の青さに映える、それが魅力だ。
「阿寒の宝石」などというが、オンネトーの美しさは決して箱庭的なものではない。湖に多くの風倒木が倒れ込んでおり、(以前きたときに比べてずいぶん増えたような気がする)水温が低いために腐食せず、独特の悽愴さを漂わせている。荒涼を内に秘めた美というべきか。
歩き疲れた身を野中温泉の酸性の湯に浸して寛ぐ。この温泉のすぐそばに雌阿寒岳の登山口がある。二十数年前、雌阿寒岳に登ったとき、下山したときにはもう膝が大笑いの状態で、やはり野中温泉に入って疲れを癒したのを思い出した。明日はまたオンネトーを歩くつもり。きっと湖はきょうとは違う表情を見せてくれることだろう。それとも雌阿寒岳の登山道を雄大な眺望が開ける4合目ぐらいまで登ってみようかな…無謀かな?
お元気ですか。道東の秋を楽しんでおられますね。全山紅葉、ヒトで溢れかえるより、スポット紅葉が心に沁みます。
返信削除すっかりご無沙汰しています。
返信削除小生、相変わらずがんを抱えてはおりますが、
いたって元気で北海道の自然風土を満喫しています。
ダイビングは先月、3年ぶりに羅臼にも復活しました。
真冬はちょっと厳しいかもしれませんが、
6月〜10月ぐらいは月一ぐらいで潜りたいと思っています。