2016年1月3日日曜日

日韓“合意”の裏表

ぼくは自分の価値観が「マイナー」だと自覚している。
視聴率1%にも満たない番組を作り続けてきたわけだし、
何より大洋ホエールズ以来、50年来のベイスターズファンだ。
自分が多数派の一員などとは夢にも思わない。
ただ、そんなぼくでも、
多数派に属していると思えることが一つだけ(?)あって、
それは「支持政党なし」ということだ。

支持する政党はおろか政治勢力もないぼくにとって、
政治的選択は「どこが多少はマシか」という一点に絞られる。
そんなぼくに言わせれば、
現在の安倍政権は「考えられる限り最悪の選択」である。
安保などの外交政策、アベノミクスの経済政策、
社会保障の切り下げと企業優遇、強権的なマスコミ対応…
どれひとつとっても全く支持できない。
願わくば、なんとか早くお引き取り願いたいと考えている。
しかし、その安倍政権が、
よくやったかな?…と思えることがひとつだけあった。
去年の暮れの、従軍慰安婦問題をめぐる“日韓の和解”である。
もちろん、
当事者である旧慰安婦女性の理解を得るという課題は残るが、
いつまでも両国が不毛な対決を続けているよりはいい。
ともかく、日本政府が「軍の関与」を公式に認めて、
国家としての責任を自覚し、
謝罪するというならそれは一歩前進だと思った。

ところが、雲行きがいきなり怪しくなる。
片山さつきさんを始めとする保守系議員が、
「(韓国と約束した)10億円の拠出は
 (慰安婦を象徴する)少女像移転が前提」だと言い始めたのだ。
常識として考えれば判ることだが、
民間団体が設置した少女像の移転を政府に求めることなど、
民主主義国家である以上は考えられない。
つまり、そもそも筋が通らない要求なのである。
だから、公式の合意文書には、
「韓国政府は少女像の移転に努力する」としか書かれていない。
当然の話で、
韓国政府には「努力」以外にできることなど何もなく、
従って「少女像の移転」は
政府間合意の「前提」などにはなり得ない。
(片山さんらは)何を馬鹿な話をしているのか、
ようやく合意を取り付けた安倍政権の足を引っ張るつもりか、
と大いに疑問に思ったものである。

ところが、合意から数日を経ずして、
新聞紙上などで、
「少女像移転が合意の前提」だとする
日本政府筋の見解を伝える記事が相次いだ。
ありえない話だ、とぼくは思った。
そんな条項は公式の合意文書に一言もなく、
もとより韓国政府が受け入れられるはずもない条件だ。
(民主主義国家として要求することすらあり得ないと思う。)
安倍政権はせっかくの合意を自らぶち壊しにする気かと訝った。
現に、韓国政府や、慰安婦を支援してきた民間団体は、
日本の報道論調に対する不快感・不信感を隠そうともしない。
このままでは、
日韓関係は却って修復不能なところまで悪化するのではないか?

だが、冷静に考えると、
報道されたような日本政府の対応はあり得ない話に思えてきた。
今回の日韓合意の背景には
アメリカの強い意向があったと伝えられる。
ぼくには外交に関する確かな情報源などないが、
筋道として、おそらくはその通りなのだろうと思う。
それ以外に、
日韓両国の政府が
それまでの姿勢を改めてまで和解を急いだ理由は考えられない。
してみれば、
せっかく成立した和解を台無しにすることは、
アメリカの面子を潰し、その意向を逆撫でにすることになる。
例えて言えば、
親分がせっかく段取りをつけた手打ちを
子分が無理筋のいちゃもんをつけてぶち壊すことに他ならない。
顔を潰されて黙っている親分はいないだろうし、
いまは亡き菅原文太さんの「人斬り与太」シリーズではないが、
逆らった子分は血だるまになって葬り去られるほかなかろう。
知性の欠如が問題にされがちな安倍さんだが、
この程度の道理さえ理解できないほどのマヌケではあるまい。
だとすれば、
国内向けには虚勢を張って強硬な発言をしながら、
その陰でアメリカに対しては、
「親分、あんじょうしまっさかいに、
 申し訳おまへんが、もうちっと黙って見とっておくんなさい。
 最後はきちっとわてがカタつけさせてもらいます」
…とかなんとか、二枚舌を使い分けていそうな気がする。

そのあたりの裏表の機微を報道機関はきちんと伝えるべきだ。
まかり間違っても、
政府の世論誘導のお先棒を担ぐようなことがあってはならない。
ぼくは政治部の記者に基本的な不信感を持っていて、
彼らの多くは
「どっちを向いて仕事しているかわからない」と見ている。
かつてちょっとした問題になったが、
当時の森首相の「神の国」発言に対して
マスコミ対策を指南したNHK記者みたいなのが
政治家の周辺に多数いそうな気がしてならないのだ。
政治の深層を知りつつ記事にはしないことで、
政治家と一種の共犯関係になり、
自分も政治を動かしている権力者の一員にでもなったように
思い違いをしている連中が多いのではないか、と。

去年は、政治・社会・経済的に酷い一年だったと思う。
今年はもうちょっとはマシな一年であって欲しいと心から願う。
そのためには、自分自身も原点に立ち戻るしかない。
本業の番組はもちろん、
インターネットを駆使して、
民主主義を支えるための発信を続けていきたいと考えている。

7 件のコメント:

  1. 「民間団体が設置した少女像の移転を政府に求めることなど、
    民主主義国家である以上は考えられない。」

    公道上に設置した場合は事情が異なります。
    10億については、移設がなくても拠出すべきだとはおもいますが。

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  2. 相変わらず、この人、NHKの看板の庇護の下、ご自分がいかにもの人物かとの自意識が過剰すぎますね。

    10億円の拠出云々の前に、報道マンならいわゆる従軍慰安婦の真実を語るべきだろうに。
    10億円の拠出の源泉は、あくまでも国民の血税。
    朝日新聞の誤報(捏造)で、従軍慰安婦の真偽が揺らいだのは記憶に新しい。
    それならば、煽動に煽動を重ねた朝日や毎日ならびにNHK、これを存分に利用した極左政治家(福島某氏ら)が、自ら10億円を捻出せよと言うのならまだしも。

    そもそも、拠出先の財団は韓国政府が設立するもの。
    果たして、韓国政府の責任と管理で行うということは、市民団体よりも上位に来るわけで、市民団体や韓国内世論の抑えこみなど紆余曲折のシロモノ。
    財団設立すら疑問符が・・・。
    受け取ったボールは韓国がどうするのか、国際世論を背景に見ていくしかない。

    また、この人と同様、《慰安婦像》と喧伝していたメディアが、《少女像》と言い換え始めた。
    「単なる少女像なら、撤去しなくとも問題は無かろう」との印象操作なのだろうか??
    「最終的かつ不可逆的に解決されることになった」との理屈から考えれば、《慰安婦像》の撤去は、韓国こそが真っ先に実施すべき問題。


    『だから、公式の合意文書には、「韓国政府は少女像の移転に努力する」としか書かれていない。』
    へぇ~、合意文書が交わされていたんだ。
    メディアの発表などでは、韓国のたっての希望で文書化はされなかったと理解していましたが・・・
    さすが天下のNHKは違いますなぁ。
    その合意文書を当ブログにもアップして頂ければ幸甚です。


    『現在の安倍政権は「考えられる限り最悪の選択」である。』
    『しかし、その安倍政権が、よくやったかな?…と思えることがひとつだけあった。』
    『ともかく、日本政府が「軍の関与」を公式に認めて、 国家としての責任を自覚し、・・・』
    支持政党は無いと言いつつ、安倍政権はことごとく非難する。
    ひとつだけ、慰安婦問題で謝罪すれば、そこのところだけは認めてあげるって、どこまで傲慢なのか。

    『ぼくは自分の価値観が「マイナー」だと自覚している。』
    『何より大洋ホエールズ以来、50年来のベイスターズファンだ。』
    『自分が多数派の一員などとは夢にも思わない。』
    少数派を自覚されてはいても、民主主義の本質は理解されていないのだろう。
    《慰安婦像》の撤去が民主主義国家と反するのなら、韓国や中国が徹底抗戦している、靖国参拝問題、我が邦の教科書問題に首を突っ込んでくることをも問題にすべきだろうに。
    「マイナー」だから、それはそれか。
    しかし、大洋ホエールズやベイスターズファンにとってみれば、思わずの災難ですね。
    一人の野球ファンとして腹が立ちます。

    『逆らった子分は血だるまになって葬り去られるほかなかろう。』

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  3. 匿名2さん「朝日新聞の『捏造』」云々されていますが、全てが『捏造』ですか。
    日本軍=政府の関与(強制制)を認めたことが今回の日韓合意の出発点です。
    元朝日記者の植村さんが産経新聞の阿比留瑠偉記者との対談(それも産経新聞新聞で行った対談)はお読みになられませんでしたか。
    慰安婦問題が報道され始めた当初は産経新聞も読売新聞も同じ報道していたことを。植村さんの指摘に対して阿比留記者は自社の新聞記事さえ知らずに大恥をかいたことをご存知でしょうか。何が『捏造』=誤報で、何が事実=歴史かをふまえて話をされた方がいいと思います

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  4. このまま反論せずのスルーでは、間違った解釈に。
    仮に、匿名3さんと呼びます。
    誤字はいいとして読解力に、いささかの疑問符が・・・・?? 
    『朝日新聞の誤報(捏造)で、従軍慰安婦の真偽が揺らいだのは記憶に新しい。』と書きました。
    この文章が、「全てが『捏造』ですか。」と読めますかね。
    真偽が揺らいだとも書き、『誤報』をも優先視しておりますが。
    針小棒大なのか、それとも木を見て森を見ずなのか、と感じた次第で。


    『日本軍=政府の関与(強制制)を認めたことが今回の日韓合意の出発点です。』
    へぇ~、両国外相の共同記者発表を見ました??  朝日新聞でも。
    共同記者発表で、強制性をどこの誰が認めてます??
    ましてや、当時の軍の関与と述べているだけで、日本軍との単語は出てきませんが。
    公式発表を前提にしないで、勝手な想像の源を恰も出発点って、他の変に偏ったブログ等がせめてもの頼りなのでしょうか。
    それとも、一般国民の知らない合意文書とやらの存在が・・ある???


    さて、本編のブログ主のポイントは、安倍政権批判、10億円拠出、合意文書、民主主義国家、マスコミ批判。
    これについて私は書いたわけで、従軍慰安婦の真偽を主として書いたものでもありません。
    それならば、お望み通り、この慰安婦問題をチョコットだけ触れておきます。

    植村氏と阿比留瑠偉記者との対談や、当初の産経新聞も読売新聞も同じ報道していたことは、よく理解しております。
    と言うか、そんなことも知らずに、そもそも当初からのコメントは憚られますので。
    1980年代から1990年代にかけて、吉田氏の捏造証言を発端にした報道の下に、産経も読売も後追い掲載した。
    朝日新聞が発した『従軍慰安婦』と言う単語・定義すらが曖昧の下、誤報(捏造)が発端であるにも拘らず。
    その後、吉田証言等の報道も真偽不明のまま、産経や読売は両論併記を経て、1990年代初頭には日本軍の強制性は無かったと報道。

    前後するが、証言主の吉田清治氏は、1977年に『朝鮮人慰安婦と日本人』を発表し「これで家計が楽になる」とも。
    いわゆる、吉田氏は単なる文筆家であって、
    「事実を隠し、自分の主張を混ぜて書くなんていうのは、新聞だってやることじゃありませんか。」(1996年)と証言している。

    片や、朝日、赤旗などの新聞社は、2014年になって初めて誤報だったと謝罪。
    毎日新聞に至っては、謝罪すら無かったように理解しております。
    さて、この20数年ほどの報道の違いは、後に何をもたらしたのか、真の日本人なら理解できますよね。


    果たして、阿比留瑠偉記者は、過去の産経報道を知らなかった。
    しかし、阿比留記者が従軍慰安婦の日本軍の強制性を認めたものではないことは、産経新聞をお読みなら理解できるでしょう。
    この対談記事が、当該新聞に掲載されるのだから、その言わんとしていることは。
    まさか、ネットの記事の都合の良い個所の拾い読みではあるまいな??
    ところで、産経新聞をお読みなら、元朝鮮総督府官吏の西川清さんの証言も目にしたでしょうね。
    【「慰安婦狩りなかった」朝鮮総督府〝100歳生き証人〟が語る「強制」の虚構、事実ねじ曲げに憤怒】
    http://www.sankei.com/west/news/151116/wst1511160006-n1.html

    最後に、両国の正式な合意文書、日本軍の強制性を記したエビデンスをお願いいたします。
    何が『捏造』=誤報で、何が事実=歴史かをふまえて話をされた方がいいと思いますが。
    良くも悪くも、人権が踏みにじられたのは事実なんだし。

    PS。
    時、同じくして水爆実験は、腹立たしい限りです。
    同じハラカラ?の問題なのでしょうね。 遺憾に存じます。

    返信削除
  5. toriiyoshikiさん、ご無沙汰してます。

    根本的な勘違いがあるようですので、指摘しておきますが、

    >常識として考えれば判ることだが、
    民間団体が設置した少女像の移転を政府に求めることなど、
    民主主義国家である以上は考えられない。

     これはむしろ、韓国政府の対応に問題があります。
     まず、設置したのが「日本大使館前の歩道上」にあると言うことを忘れていませんか?先進国であれば公道上に民間人が勝手に建造物を設置することはあり得ません。
     当然ですが、民間団体が設置するとすれば、韓国政府の許認可が必要になります。
     で、もし韓国政府が少女慰安婦像を日本大使館前に設置することを許可したと知れば、これは「外交関係に関するウィーン条約(韓国も批准しています)」に違反します。
    第二十二条
    2 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は「公 館 の 威 厳 の 侵 害 を 防 止 す る」ため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。

    一方、民間団体が許認可を得ずに設置したのであれば、当然韓国政府は移転ないし除去することは当然可能です。

     現に2002年に起きた米軍装甲車による女子中学生轢死事件で、韓国民間団体が米国大使館前に記念碑を作ろうとしましたが、韓国政府は許可すらしていませんし、後日、大使館から離れた所に設置したものすら、韓国政府によって撤去されています。

     民主主義国家は国民の権利を可能な限り守るべきものですが、無制限にと言う意味ではないです。例えば、韓国大使館前で慰安婦像撤去のデモをしようとすれば、デモの許可すら下りないですし、無許可でデモを行えば当然排除されます。デモも国民の権利ですよね。

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    1. 兼古先生、すっかりご無沙汰しています。
      ご健勝ですか?
      小生は今月末の定年退職を間近に「最後の番組」の編集中です。
      さて、「少女像」の件ですが、
      法や条約の運用に「解釈」の余地があるのは言うまでもないことで、
      韓国政府が公道上に「少女像」の設置を認めたことは、
      ウィーン条約にいう
      「公館の威厳の侵害」に当たらないと判断したことを意味します。
      (極めて「政治的」な判断であることは言うまでもありませんが…)
      一度公式にそう判断(解釈)したことを
      外交交渉によって変更したとすれば「屈辱外交」の誹りは免れず、
      日本の圧力に屈したかたちになるので政権はモタないと考えられます。
      従って今回の日韓合意でも
      「努力する」というかたちに留まっているのだと思います。
      まぁ、そこが双方の面子を立てた「玉虫色」決着なのですが、
      日本政府がウィーン条約違反で押して
      韓国政府が公式にそれを認めたということではない以上、
      少女像の撤去が「合意の前提」とはなり得ません。
      日韓両政府とも、
      アメリカの圧力の下で合意を余儀なくされ、
      国内向けには矛盾した説明をする
      「二枚舌」に終始している危うさを感じます。

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  6. 回答ありがとうございます。
    そうですね。まあ、結局のところ、アメさんの言うなりになってるだけですw

     ただ、少なくとも「撤去を求めることは民主国家としてありえない」ってのは間違いです。そこはおわかりいただけました? 仮に実際に設置したのが民間団体であれ、韓国政府の責任ないし黙認で慰安婦像が設置された以上、韓国政府に対して日本政府が移設ないし撤去を要求するのは、当然とまでいわずとも、筋としておかしな話では無いと言うことです。もちろん民間団体が自分の土地に設置したとあれば、これは明らかな筋違いの話になりますが。

     ま、それはさておき。
     昨年私はこれまで党員で行ってきた救急関連の集大成となる論文を出しました。実はこの件で連絡を取ろうかなと思ったところ、この記事が目にとまったためコメントした次第です。地方の小規模病院がどれぐらいのことが出来るのか、という点でかなり面白い論文になったかと思います。もし、お時間があれば目を通していただければ幸いです。
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/18/4/18_563/_article/-char/ja/

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