2015年4月18日土曜日

ETV特集「終りなき戦い」今夜の放送です。



 一年がかりで撮影してきた最新作、
ETV特集「終りなき戦い 〜ある福島支援プロジェクトの記録〜」が
今夜11時から放送される。
放射線防護学者の安斎育郎さんら、
放射線への不安のなかで暮らす福島の住民を支える
ボランティア集団「福島プロジェクト」の活動を追ったものだ。
メンバーは75歳の安斎さんのほか、
原子核物理学者の桂川秀嗣さん(73)、
福島学院大学教授(健康教育学)の佐藤理さん(68)
エンジニアの早川敏雄さん(61)
同じくエンジニアで技術開発を担当する山口英俊さん(56)。
平均年齢66.6歳、
いずれもキャリア豊富な専門家が、
毎月3日間、福島に集結して住民への支援活動を行なっている。
放射線の測定はもちろんだが、
被ばくを防ぐための実践的なアドバイスをし、
ときには自ら汗を流して除染にも取り組んでいる。
福島では避難指示区域の一部を除いて
国による除染作業がかなり進んできたが、
実際のところ、
局所的に高い放射線を発する
マイクロ・ホットスポットがあちらこちらに残されている。


「福島プロジェクト」のスローガンは、
「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に怖がる」。
安易に「安全」を請け合うことはないが、
一方で「危険」を煽るような言動は慎重に避ける。
福島でも現に人が生活する地域については、
健康に明白な影響を及ぼすほどの放射線はほとんどないのが現状だ。
番組を見ていただければ判るが、
「福島プロジェクト」で
福島で現に生活している人の積算線量を調査したところ、
自然放射線や食べ物から平均的な日本人が受けている被ばくに比べ、
年間1ミリシーベルト前後多い範囲におさまっている。
(番組では一例の紹介だが、プロジェクトは複数の調査を重ねている。)
北欧諸国やフランスなど自然放射線の強い国の人々に比べれば
かなり低い被ばくですんでいるということだし、
国が除染の目標としている
「年間1ミリシーベルトの追加被ばく」をクリアしていることになる。
だからといって、
現状でいいということはないし、
東京電力や国が免責されるわけでもないことが重要である。
安斎さんによれば「放射線量は低ければ低いほどいい」、
原発事故に起因する住民のリスクは
より小さい方がいいに決まっているからだ。
だから、様々な放射線防護の対策を講ずるし、
国に対してさらなる除染を求めることが必要だというスタンスである。
(現状では環境省は「再除染」を拒否している。)

ぼくのように、
福島に通い詰め、
現地の人たちの生活の現状や抱く不安をよく知っている人間にとっては、
実に説得力があって共感もできる姿勢である。
(だからこそ、ぜひ番組にしたかったわけだが…)
しかし、原子力発電を推進してきた
「福島の安全」を強調したい勢力にとっては目障りだろうし、
一方で福島で生活することは危険だと主張する人たちからの反発もある。
40年以上にわたって
様々な“迫害”を受けながら「反原発」で通してきた安斎さんを
「御用学者」呼ばわりするトンデモナイ人もいるほどだ。
そういう人にこそ今夜の番組を見てもらって、
虚心に現実を見つめてほしいし、
「福島プロジェクト」の人たちの真摯な姿勢を受け止めてほしい。

番組の作り手としては、
「いまの福島の現実」をきちんと記録し得た自負はある。

ETV特集「終りなき戦い 〜ある福島支援プロジェクトの記録」

今夜11時Eテレでの放送です。ぜひご覧ください。




6 件のコメント:

  1. 拝見いたしました。
    専門家のアドバイスというのは 説得性と安心感が違うんだなと思いました。
    親身になってくれる 地域医療の先生みたいな 雰囲気とでも いいましょうか・・・
    また 自ら データ収集という意味もあるのでしょうが・・・・?
    75歳の体にムチ打つ姿は なんとも いえません。
    安斎先生なんかは専門家として・・・事故を止められなかったという心情と
    若い時期の熱い想いが 放出されているのですねぇ。
     まぁ とにかく・・・平均年齢 66.6歳のパワーは凄い。
    これに地元の若い助っ人が加われば・・・・ 居住エリアについては・・・
    以前の暮らしに近くなる日も そんなに遠くは なさそうですね。
    手品のシーンもよかったですが 使い込まれた電卓が生き様のような心象風景。

    非常に丁寧なドキュメントだと思いました。

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    1. いつも本当にありがとうございます。
      ドタバタしていて返信が遅れてしまいました。
      お許し下さい。
      確かに「若い助っ人」というか、
      引き継いでくれる人を探すのが課題ですね。
      驚くほどお元気な「平均年齢66.6歳」ですが、
      やはり次第に疲れも出てくることでしょうし…。
      原発事故というのは半減期何十年などと「時間の感覚」が違います。
      それだけ「取り返しのつかない」事態なのですが、
      ぼくら報道としてもどう「風化」と戦っていくのかが課題です。
      小生もあと9ヶ月で定年退職、
      それまでにカタがつくような問題ではむろんないので、
      自分自身がどう関わりを続けられるのか、
      どう継承するかなど課題はこちらも山積です。

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  2. 煙突の煤を採る時や防風林を伐採されたお宅の除染等
    マスクもなしの作業はいくら60歳以上とはいえあまりにも無防備で心配になりました。
    煤が落ちてきたときには思わず画面の前で声をあげてしまいました。

    放射線量測定が簡単にできる機械も国の補助はされない。
    薪燃料も東電に申請して電気にはならない。
    宅地以外は除染しない。
    福島の村・町・市・県・国の議員は何をやっているのでしょうか。
    自分たちの住民を守る気があるのでしょうか。
    非常に疑問に思いました。

    福島に住んでいられる方に現実的に寄り添う福島支援プロジェクトチーム。
    5人の方が月に三日間でできる事は限られています。
    2メートル四方の除染をして子どもたちは遊べるのでしょうか。

    当主の方の4年後の疲れた表情がすべてを語っているように思えました。

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    1. 番組を見てくださってありがとうございました。
      マスクや手袋もしないでの作業に正直ぼくも最初は驚きました。
      しかし、キャリアが半世紀に及ぶ放射線防護の専門家ですから、
      そのリスクに関する値踏みは当然したうえでのお話です。
      そのことが逆に、
      いまの汚染の実態がそれほど神経質になるほどのものではないこと、
      それでも、少しでも住民のリスクを減らそうという
      「福島プロジェクト」の認識と姿勢を浮かび上がらせているように思います。

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  3. さくら保育園の保護者です。
    震災直後の4月から安斎先生の支援を頂きました。
    様々な情報が錯綜するなか、この問題とどう向き合えばいいのか苦しんでいた時に、
    「正しく怖がる」ことを教えて頂き、長い時間をかけひとつずつ検証しながら進むことが出来ました。
    番組、素晴らしかったです。

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    1. ありがとうございます。
      さくら保育園の保護者のみなさん、
      園長先生をはじめとする関係者のご努力は、
      福島原発事故の惨禍のなかで一際光っている対処だと思います。
      子どもたちを守るための具体的・実践的な取り組みには頭が下がる思いです。

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