2013年6月29日土曜日

テレビは「衰亡」を記録する。


普段はほとんどテレビを見ないぼくだが、
昨夜は見たい番組が3本もあった。
こんなことは珍しい。

まず7時半から「クローズアップ東北」、
福島の避難地域で野生動物が増えているという話である。
そう言えば、去年飯舘村を取材したときも、
留守宅の庭がイノシシに荒らされていたり、
柱がネズミに齧られて穴が開いたりしていたっけ。
野生動物の跋扈により、
除染や自然減衰によって放射能が減っても
避難者が自宅に帰れなくなりつつあるという現実は重い。
ぼくにとってこの問題はちょっとした盲点であり、
事実を認識しながら
その意味を深く考えてはいなかったことを反省させられた。
番組としては、
現実のインパクトがすべてで、
展開がなく話が深まらないのがちょっと残念だった。
「クローズアップ現代」として全国放送するようだが、
こうした「情報番組」というのはぼくには食い足りない。

続いて8時からは土偶をテーマにした「東北Z」。
縄文文化の研究家でもある
旧知の俳優・苅谷俊介さんがナレーターを務める。
ぼくは苅谷さんのナレーションが大好きで、
また一緒に仕事をしたいなぁと思っていたところである。
御自身がのめり込んでいるテーマだけあって、
この番組でも大変いい味を出している。
NHK山形放送局制作の番組で、
国宝に指定された「縄文の女神」を丁寧に撮影して、
その深い魅力を余すところなく伝えているのが何よりだ。
ともかく手間をかけて丁寧に作っているのが好ましい。
ただ、放送時間の制約があったのだろうが、
縄文文化の中心がなぜ東北だったのかという
謎解きの展開があまり実証的でなかったのが惜しまれる。
遮光式土偶(ぼくたちが一番見慣れたアレだ)は
東北を中心に作られていたという話だが、
土偶の出土地や
作られた時期による形状の変化を
(なにせ縄文時代は1万年も続いたのである)
一度は全国レベルで俯瞰する必要があったのではないか。

入浴をして(きょうは週に一度の休肝日であった)、
今度は10時からのNHKスペシャル、
「住民合意 800日の葛藤」をモニターする。
津波で壊滅した名取市閖上(ゆりあげ)を舞台に、
かさ上げをして現在地に街を再建するか、
それとも内陸部に移転するのかをめぐって、
住民の合意がとれず「復興」が遅れているという話だ。
現在地にもう一度街を作り、
名物だった朝市を軸に復興をなし遂げようと考える人。
家族の遺体が未だに見つからないなかで、
そこに土を盛り街を作ることには抵抗感を拭えない人。
現在地での再建を
強引とも言えるリーダーシップで牽引しようとする市長。
三者三様の「被災からの時間」を丹念に記録している。
市長(行政)を
単純な悪役に仕立て上げようとしなかったところがいい。
それぞれに納得できる考え方であり行動なのだが、
それが折りあえず、時間だけが虚しく過ぎ去っていく。
時間の推移は残酷で、
街が再建されても戻らないという人が
次第に増えているという現実をもこの番組は伝える。
結局、最後まで何も決まらず、
地域が解体されていく予感を残して番組は終わる。
実にすっきりしない終わり方なのだが、
すっきりしないのは「現実」そのものなのである。
冷たく言い切ってしまえば、
この番組は「復興の不可能性」、
大災害をきっかけにした地域衰亡の第一歩を
期せずして記録してしまったのではないか。

30年あまりテレビ番組の取材を通して
日本社会の推移を見つめ続けてきたぼくは、
東北のみならず、日本の社会全体が、
すでに不可逆の衰退過程に入ったとみている。
アベノミクスなんざ小指の先ほども信じていない。
原発被災地での野生動物の跋扈を描いた
「クローズアップ東北」もあわせ、
誰が悪いというのではなく、
震災が必然的な衰亡を加速させている現実を
まざまざと目の当たりにした気がする夜だった。
「衰退」を受け容れ、
より貧しく夢のない縮小均衡を図っていくしか、
東北、そして日本の「出口」は見えないのではないか。


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