入院病棟の夜は更けて…

仙台はよく晴れた朝を迎えた。
ぼくは執行猶予(仮出所というべきか?)が終わって、
再び収監されることになった。
前回は消化器科で7Fだったのが今度は4F外科病棟。
低くなったぶんだけ、窓からの見通しが利かなくなった。
カメラを持ってこなかったので、
iPhoneソフトのKitCamを使って窓の外を撮る。
このソフトは最近ぼくのお気に入りで、
リアルではない、
何処か大昔の銀塩カメラのような絵が撮れる。
要するに玩具なのだが、弄っているとけっこう飽きない。


今回の入院が前回と違うのは、
入るといきなり点滴に繋がれてしまったこと。
注入するのは生理食塩水に電解質が混じった、
要するにポカリスエットの親戚のようなものらしい。

ぼくは入院したくらいだから病気なのだが、
自覚症状が全くない。
早い話が「痛くもかゆくもない」のである。
だから、入院していても、
どうも自分が病人のような気がしないので困る。
それが点滴に繋がれて、
どこに行くにも
点滴をぶら下げたポールを
ゴロゴロ引きずって歩くようになると、
なぜか一人前の病人になれた気がするから不思議だ。


…しかし、これからしばらく、
24時間、点滴と一緒に暮らすのも鬱陶しい話だ。
筋力がすっかり落ちてしまうのではないかと、
早くも退院後のことが心配になる。
56歳になってから体力の衰えを自覚し、
毎朝、腕立て、腹筋やスクワットを続けてきたが、
これで元の木阿弥になってしまいそうだ。

ぼくは今回も個室への入院をお願いした。
病棟の消灯時間は9時だが、
普段が宵っぱりのぼくはそんな時間には眠れない。
他の患者さんが寝静まってから、
インターネットをやったり、
本を読んだり、
(小林信彦さんの「四重奏 カルテット」を持ち込んだ)
iTunesでダウンロードしておいた映画を観るつもりだ。
(ヘッドフォンも用意して準備万端ぬかりはない。)

差額ベッドの料金は
医療保険ですべて賄える目処が立っている。
毎月安くない保険金を払い続けてきたのが役に立って、
嬉しいような、そうでもないような…複雑な気分だ。

時刻はまだ8時前、
いつもなら、さァ飲み始めるぞという時間だ。
夜はまだまだ先が長い。
幸いかみさんに言わせれば「退屈しない性格」なので、
無聊をかこつ心配はなさそうだ。
思えば、ここ数年、
仕事にも遊びにも貪欲なあまり、
ちょっと急ぎすぎていたかもしれないという気がする。
これを機に人生のスローダウンを図るのも、
案外悪い話ではないのかもしれない。

コメント

  1. 今ごろは、もう手術中でしょうか。toriさんの手術が無事終了することをお祈りしています。私事ですが、これまで親族の手術に数々つきそい、いろいろと見てきました。胃の全摘、肺葉の2枚摘出、開頭、冠動脈バイパス、脊椎をノミで削る、などなど、年をとると、周辺の人々も高齢者が多くなり、毎年のように、入院手術に付き合うようになってきます。私自身は、左踵骨を3つに砕き、接合手術をしたのが8年まえのこと。以来、入院はありませんが、いつ何時、何に襲われるか、一瞬先はわかりません。速やかに麻酔から醒められ、お元気でありますように。

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