鳴子温泉郷で入浴三昧

昨夜は鳴子温泉郷・中山平温泉に泊まった。
宿は「三之亟湯」、
中山平温泉駅のすぐ裏側にある民宿のような宿だ。
泉質は純重曹泉で微かに木酢臭がある。
pH8.4の弱アルカリ性で肌がすべすべする。
朝風呂に入って8時40分頃に出立、
国道47号線を歩いて東に向かう。
同じ中山平温泉といっても泉質が違うらしく、
だんだん硫黄臭が漂い始める。
およそ20分で鳴子峡のレストハウスに到着する。

鳴子峡は紅葉の名所として知られるが、流石にまだ早い。
大深沢遊歩道というのがあるので歩いてみたが、
展望が開けないのでさして面白い道ではない。
渓谷に沿ってよさそうな遊歩道があるが、
どういうわけか現在は立ち入り禁止になっている。
思ったより展望が開ける場所がなく、
深い谷底の渓谷を望めるのは数ヶ所だ。



上の写真で左に見えるのが大深沢橋。
その橋の上から撮ったのが下の写真で、
ぼくはここからの光景が一番気に入った。
ただし、Fujifilm X100の35mmレンズでは引ききれない。
28mmのついたSigma DP1を持ってくるべきだった。
紅葉が綺麗に染まれば、まさに絶景だろう。
速攻で今月末にもう一度訪れてみることを決めた。


大深沢橋から1時間あまり歩くと鳴子温泉に着く。
ぼくの経験では、
こうした温泉地では公衆浴場の湯が概ね一番いい。
鳴子温泉には「滝之湯」なる公衆浴場があって、
入浴料はわずか150円である。
さっそく入ってみると、
案に違わず素晴らしいお湯だった。
硫黄臭が強く、pH2.8の強酸性、お湯は白濁している。
すぐ裏にある噴出口から
素朴な木の樋で湯を引っ張ってきていて、
気持のいい打たせ湯がある。
浴場は狭いが、まず申し分がない。


後で知ったのだが、
60軒あまりの宿がひしめく鳴子温泉郷は、
ほとんどの宿が自家泉源の源泉かけ流しらしい。
当然、泉質はそれぞれ微妙に違うのだろう。
こんな温泉地は他に記憶がない。
全国的に名の知れた温泉地のほとんどは、
泉量が枯渇気味なのだろう、
大きなホテルは循環式を使っていることが多い。
従って、泉質はどうしても「アメリカン」になる。
それが鳴子温泉郷では、
100室以上あるホテルも源泉かけ流しというのが凄い。
「滝之湯」の入口に貼ってあった温泉番付で、
(上の写真でもちらっと確認できる)
鳴子温泉は東の横綱に認定されていたようだ。

鳴子温泉駅の近くで昼めしを食って、
(駅の近くに手打ちそば屋がないのがちょっと不満だ)
それからまた歩いて、
さらに東(下流側)の東鳴子温泉に向かう。
目的は「高友温泉」の「黒湯」である。

ぼくはかなり変種の温泉マニアで、
「鳴子温泉」と聞いてまず最初に思い出したのが、
甘粕正彦元憲兵大尉のことだった。
関東大震災のどさくさに紛れて
大杉栄らを虐殺した(とされた)甘粕は、
服役の後、鳴子温泉に身を潜めていたのである。
それが「高友旅館」で、
つまりは大正の昔から続いている温泉宿だ。
ちなみに角田房子は著書「甘粕大尉」で
「高友旅館」を「川渡温泉」としているが、
川渡温泉はさらに下流なので、これは間違いだろう。


「高友旅館」は如何にも古色蒼然とした温泉宿である。
昔から湯治場として知られてきたところのようだ。
ここの「黒湯」は温泉好きには有名で、
せっかくだから温泉の「はしご」を決め込むことにした。

「黒湯」は如何にも素っ気ない石造りの浴場で、
その名の通り湯の色が暗緑色に濁っている。
混浴だが、身を隠す場所も何もないので、
よほど度胸がある人でもない限り、
(若い)女性は入れないだろう。
浴室に足を踏み入れたとたん、
油臭いというか、コールタールにも似た臭いが鼻につく。
こんな臭いがする温泉は初めてである。
脱衣場に「のぼせ過ぎに注意」と貼り紙があるが、
確かに体が奥底からぽかぽかと暖まってくる。
泉質は含硫黄・ナトリウム・炭酸水素泉で、
pH6.7の弱アルカリ性。
泉質はぼくが入った温泉の中でも5本の指に入る。
高友旅館は他にも泉質の異なる風呂があるので、
そちらにも入って、
近くの停留所から仙台行の高速バスに乗って帰った。
到着まで体がぽかぽかしていて、
身も心もふやけて溶けてしまいそうだった。


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