ウディ・アレンの快作「ミッドナイト・イン・パリ」


全く予備知識を持たずに観た。
できるだけ先入観なく映画を観ることを心がけているが、
これほど内容について何も知らないケースも珍しい。
我が家から歩いて2分の映画館「フォーラム仙台」、
劇場の前に貼ってあったポスターで、
ウディ・アレンの新作と知って観る気になったのである。
パリを舞台にした「大人の恋愛劇」かな?
…というくらいの気分だった。

開巻、
パリの風景が
一日の時間につれて変わっていく様が延々と映し出される。
ぼくはパリに思い入れがないので、
「まさか観光映画じゃないだろうな」とちょっと悪い予感。
主人公は婚約者とパリに観光旅行にきた
アメリカ人の売れっ子シナリオライターで、
パリに憧れ、初めての小説を執筆中で、
将来はパリに住みたいと考えていることが判る。
どちらかといえば二枚目なのに、
売れっ子の「業界人」には見えないほどダサくて社交下手。
婚約者の両親と交わすかなり危ない会話(笑)から、
ウディ・アレンは主人公のキャラクターを打ち込んでくる。
テンポもウィットに富んだ洒落っ気もあって快調、
「悪い予感」はこのあたりで跡形もなく消える。
恋人同士の二人のあいだに、
婚約者が学生時代に憧れていたという
ペダンティックな知的スノッブ(大学教授?)が絡んでくる。
かなりヤな奴なのだが、
ロマンチストの主人公に対して現実的で俗っぽい婚約者は、
むしろこの俗物と波長が合い、
主人公は次第に居場所を失っていく。
夢見がちな男と現実的な女が噛みあわないのはパターンだが、
(かなり現実的な設定でもある…w)
疎外された男が深夜のパリで迷子になるところから、
物語はぼくが全く予想しなかった展開を始める。

以降の展開は幸福感に満ちたもので、
映画を見終わったときには
なんとなくパリが好きになってしまった。
どうやらウディ・アレンの繰り出す映像の手品に
手もなく、してやられたということのようである。

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