奥尻という風土

火曜日から奥尻島でのロケを続けている。
前回きたときに比べ、驚くほど雪融けが進んでいる。
北海道も南西部とあって、
島の春は思いのほか早いようだ。
水曜日までは風が強く海も時化ていたが、
木曜日からは穏やかな日が続き、
港ではカスベやメバル、ホッケなどの水揚げがある。

海とともに生きてきた島には、独特の風土感がある。
島の最北部・稲穂岬の「賽の河原」。


19年前の大津波で多くが崩れたが、
ここには無数の石積みが並んでいた。
高いものは1mもの高さに積まれていたという。
死者の霊を弔う場所である。


並んでいる地蔵のなかには、
腹掛けに
亡き父親への便りを書き記したものもあった。

「パパへ。
 元気ですか?
 みんなは、元気です。
 ○○は今年四年生になりましたよ」

島の西海岸は
海岸線に沿って奇岩が立ち並ぶ美しいところである。
温泉もあり、いつか仕事を離れて訪れたいと思う。
ここにはワイン工場があって、
島で採れた葡萄を原料にワインを醸している。
まだ十年に満たない歴史だが、
潮風が育んだ葡萄に由来するのだろう、
独特の香りをもった
なかなか素性のいいワインができ始めている。

この西海岸にぽっかりと浮かぶのが無縁島。
眺めているうちに不思議なことに気がついた。
ここでは波が両側から寄せてきて、
島の正面でぶつかりあい飛沫を上げるのである。
海底の地形からくるものらしいが、
なんとも奇妙な光景である。


FUJIFILM X100で撮った動画をアップしておく。
両側から波がきているのが見て取れるはずだ。


この島をかつて大津波が襲い、
200人近い人たちの命を奪った。
西海岸では30mもの高さに達していたという。
海は人知を超える。
無縁島に寄せる波を見ながら、
海とともに生きてきた島の宿命に思いを馳せる。



コメント

  1. 奥尻撮影、ごくろうさまです。
    はや1年ですね。
    インドネシアの津波も、四川の大地震もありましたが、やっぱり国内の震災が影響が強いですね。この週末の、子ども(小5)の宿題は、テレビ番組(震災を扱ったものなら何でも)を見て感想を書かせるものでした。

    なお、無縁島に寄せる波は、湘南の江ノ島でも見られますよ。やはり地形が影響してるんでしょうね。

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  2. 30mの津波はこの無縁島の浜です。
    東北の津波と同じでほぼ同時に発生した2つの地震での津波が2つとも押し波できました。
    東北から1年でも南西沖や阪神などと同じで地震に対しての気持は当時のまま止まってます。
    ちなみに南西沖地震で沈下してしまいましたが、無縁島の波がぶつかる所は浜と無縁島の中間辺りまで石浜が出ていました。
    このようになったのは地震の後からです。
    今でもせめて隆起してくれれば良かったのにと思ってます。
    お邪魔しました。

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  3. >壁際椿事さん

    ぼくにとって記憶にないほど短かった一年でした。
    時間が過ぎていくのが早すぎて…。
    江ノ島のことは知りませんでした。
    東京に十年以上住んでいたのに、近くて遠い江ノ島でした。

    >匿名さん

    奥尻に縁の方ですね。
    30mの津波の到達が確認された場所はぼくも見てきました。
    それほどの高さできたら、
    どんな備えをしてもひとたまりもないなと思いました。
    東日本大震災では、
    田老に38m(だったかな?)まで波がきた場所があり、
    遙かに海を見下ろす崖の上で9人の人が流され、亡くなっています。
    いったん猛れば、自然の力はあまりに凄まじいものです。
    奥尻西海岸の美しい景観を眺めながら、
    自然のなかで人が生かされているということを改めて実感していました。

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