奥尻から朝のフェリーで引き揚げてきて、昼過ぎに函館に入る。午後の飛行機で東京から妻がやってきて合流。妻のたっての希望で「函館」「小樽」「札幌雪まつり」…冬の北海道観光を楽しもうというのである。
ぼくは前後17年間を北海道で過ごしている。56年の人生のなかで、都道府県別に云えば北海道での生活が一番長い。江戸っ子は三代重ねなければ認められないらしいが、蝦夷っ子は三日やったらやめられないというから、「準道産子」くらいには認定してもらえるのではないか。
ところがそれだけ長く北海道にいてもついぞ「観光」というヤツには興味がなく、函館には仕事で何度か訪れているが「100万$の夜景」とやらは拝んだことがなかった。雪まつりに至っては、職場が会場のすぐそばであったにも拘わらず、会場を横切っていただけで見物をしたという記憶がない。
日が落ちるとロープウェイで函館山の山頂に登る。ロープウェイの運賃は往復1160円。たかだか5分ほどしか乗らないというのに、さすがに観光地だけあって強気な価格設定である。それだけあれば、浜松町から羽田までモノレールで往復して、もう一度天王洲アイルまで行ってお釣りがくるではないか。もっとも、初めてみる函館の夜景は評判通りの美しさだった。煌めく街の灯の両側を漆黒の海が挟んでいる陰影の深さがいい。
ロープウェイを下りて、しばらく元町界隈を歩いてみる。ハリストス正教会や聖ヨハネ教会、
元町カトリック教会(写真)などがライトアップされて雪の中に佇む様子が美しい。冬の夜に散策する観光客は少なく、その静けさが何より好ましい。
ちなみにぼくは中富良野のラベンダー畑も見たことがないのだが、妻は「今度はラベンダーを見に来ようね」と早くも次回の「観光」計画に心を馳せているらしい。
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