吹雪の島で…


雪は昨夜のうちに20cmくらい降ったようだ。
北海道南西部の離島・奥尻。
きょうも雲が重く、時おり激しく吹雪いた。
吹雪いているのは降る雪なのか、
それとも風が積もった雪を吹き上げる地吹雪なのか。
島を出るフェリーは欠航した。
青苗の港で船の雪かきをしていた男に訊けば
イカの漁期は今日までらしいのだが、
今年は漁模様がふるわないらしく、
天候のせいもあって港に動いている船はいない。


青苗はかつて北海道南西沖地震の大津波に襲われ、
壊滅的な打撃を受けたところである。
1993年7月12日。
死者・行方不明者は青苗だけで100人を超えた。
いま港を歩いて目につくのは、高さ6.2mの「人工地盤」である。
一見したところコンクリートの屋根のように見えるが、
随所に階段が用意されていて、
津波が来るときはこの上に駆けのぼるのである。
「人工地盤」の上から町までは、
そのまま避難できるように橋が架けられていた。
ふだんは下のスペースを様々な作業に使っているらしい。

青苗を襲った津波の高さは6mだったらしく、
人々は水面から6mの高さまで盛土をして、
その上に家を建てて暮らしている。
全戸高台移転の計画もあったらしいが、
漁師は海から離れられないという声があってこうなった。


町のすぐ裏側には20mほどの高台があって、
そちらに住居を移して暮らしている人も少なくない。
津波に舐め尽くされた岬地区の住民は全戸移転の道を選び、
いまはこの高台に家を建てて住んでいる。
かつての岬地区はいま慰霊碑のある公園になっているが、
除雪をしていない一面の雪野原で近づくことができなかった。
青苗の町は高台の上と下に、
住民それぞれの考え方によって二分された格好である。

今年はいつになく雪が多いらしく、
人々は通りに出て雪かき(雪はね)をしている。
車の通行も少なく、人は黙々と雪と格闘する。
町は死んだような静けさに包まれていた。

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