故宮と餃子


台湾の食べ物は安くて旨い。
大陸に比べると脂っこさがないのが好ましい。
あろうことか、今日は昼食から3軒をはしごした。
まず1軒目はホテルの近所の定食屋。


中国ではこうした大衆的な店の方が概して旨い。
上海滞在で培ってきた、ぼくたち夫婦の経験則である。
ぼくが注文をしたのは
「猪脚麺」という茹でた麺に豚足を添えたもの。
太めの麺に腰があってなかなか旨い。
妻は細い汁なしビーフンの「麺線」を食べた。
続いて「三十年老店 傳統料理」の看板に惹かれて、
「大腸煎」なるものを食す。
早い話がもち米の腸詰めである。

この程度で充分だろうと思ったら、
妻がどうしても餃子が食べたいという。
正月早々、ダイエットの野望を棄てたのだろうか?
ほっつき歩いていたなかに
大勢の客で賑わっている餃子屋があったので、
そこなら間違いがなかろうと入ってみることにした。
「青島餃子館」という半露天の粗末な店である。


椅子に坐るなり、
妻がいきなり餃子を30ヶ注文したので驚く。
いくらなんでも食べ過ぎである。
ところが、これが頗る美味で、
二人して瞬く間にぺろっと食べてしまった。
この店の餃子は
白菜ではなく「高麗菜」(キャベツ)が入っている、
だから歯応えがあるというのが店のおばちゃんの自慢。
あとはひき肉とニラで、ニンニクは入っていないようだ。
具の淡泊な味わいと、
滑らかでもちもちした皮のマッチングが絶妙で実に旨い。
ちなみに値段は1ヶ5.5元、現在のルートで15円弱である。
30ヶ食べても450円くらいのものだから、安い。
(追記:翌日もこの店を訪ね、今度は40ヶ食べた…w)
上海出身の妻は言葉に不自由しない。
ところが、地図が読めず、根っからの方向音痴である。
ぼくの方は、自称「知らない街歩きの達人」だが、
言葉は日本語以外は皆目できない。
まさに割れ鍋に閉じ蓋の台湾旅行である。
とはいえ、道案内はほとんどぼくがすることになる。
(妻の故郷の上海でもぼくが道案内したので今さら驚かないw)

午後は故宮博物館を訪ねた。


西周や戦国時代の青銅器、唐の女人像、
元の時代の水墨画、
宋から明にかけての磁器、
清の精緻極まりない翠玉細工や象牙の工芸品…
素晴らしい収蔵品の数々に心を奪われ、時間を忘れる。
中国四千年のまさに至宝である。
これだけのものが伝えられてきたことだけでも凄いが、
日本軍のさん奪を避けようと転々と収蔵場所を移したり、
国共内戦で敗色濃い国民党が
混乱のなかで台湾に移すお宝中のお宝を選りすぐったりした、
歴史遺産に対する中国人の執念、
そしてまた鑑定眼の確かさには脱帽するしかない。
宝をみすみす台湾に持ち去られた大陸側(共産党)は
さぞかし地団駄を踏んで悔しがっただろうと思うのだが、
もし中国に置かれていたら
きっと文化大革命で滅茶苦茶にされただろうから、
台湾に運ばれてよかったというのが妻のクールな見解である。

故宮には三時間以上いたが、
とてもではないが、すべて見切れるものではない。
絵巻物「清明上河図」に描かれた人物群像だけでも
30分ほど見入ってなお飽きないのである。

コメント

  1. >何を食べても安くて旨い。

    幸福度 高いわぁ~~>

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  2. 高くて美味いのはアタリマエ。安くて旨いのには幸福感と感動があります。高くて不味いと怒ります。
    …台湾には幸福感が横溢していました。また行きたいなあ。

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