2011年11月9日水曜日

無責任な言説について

番組というかたちでの「表現」を生業とする以上、
批判を浴びせられるのは、当然、覚悟のうえのことである。
番組を見てくださる方々には「それぞれの観点」が保障されている。
だから制作者としては批判は批判として甘受するしかないと考えている。
もちろん、なかには心ない、単なる罵詈雑言としか思えないものもある。
あるいは、勘ぐりとしか思えない、根拠レスな「決めつけ」も少なくない。
だが、それはそれで、
書いた人たちの器や“品格”の問題だと思っているので反論する気はない。
かみさんは愛する亭主(?)への批判を読んで怒り狂ったりするのだがw、
ぼく自身はまるで腹を立てていないのが正直なところだ。

とはいえ、看過できない言説もある。
例えば、匿名で寄せられたコメントの一部…

「福島が死の土地であることぐらい、しっかり認識すべきです。
 その上で、そこに住んでいた人たちをどうすべきなのか、
 考えねばならないと思います」

書いた本人に悪意はないのかもしれないが、無責任極まりない。
なぜこうした言説が無責任なのか?
問題は「福島が死の土地」という表現である。
「住民の気持ちを傷つける」などという情緒的な話をしているのではない。
なんら客観的な根拠を提示することなく、
福島を「死の土地」だと決めつける乱暴さは、
無神経を通り越して「無責任」だと言わざるを得ないのである。
「匿名」氏は、
年間線量が何ミリシーベルト以上なら
回復不能の「死の土地」だと考えているのか。
1か5か、それとも10、20なのか…?
それとも、他になんらかの独自の基準をお持ちなのか?

いうまでもないことだが、
放射能が県境を尊重して拡散するなど笑い話にもならない。
福島県の会津地方より
東京23区の一部の地域の方が空間線量が高いのは知られた事実である。




写真はSAFECASTによる11月7日の線量調査の結果だが、
上が東京の足立区綾瀬付近。
下が福島県喜多方市の中心部の線量を現している。
黄色は毎時0.5μSvが観測された地点、緑は0.2μSvのところで、
どちらが高いかは一目瞭然だろう。
こうした現実があるのに、
なぜ「匿名」氏は乱暴にも「福島が死の土地」と言い放ち、
東京を「死の土地」とは表現しないのか。

「匿名」氏の真意がどうあれ、
こうした言説は、
「福島=放射能に汚染された土地」というレッテル貼りにしかならない。
そして、それは必然的に「福島に対する差別」を促進することになる。
福島に住む多くの人たちが
子や孫が、将来、結婚差別を受けるのではないかと心を痛めている。
予想される差別から逃れるために、
本籍地を「福島」から移す動きがあるとも聞く。
こうした無責任な言説が、
結果として差別を助長していくことにぼくは激しい怒りを禁じ得ない。

宮古の瓦礫を東京に運ぶことに伴う混乱劇にも同じ問題を感じる。
原発事故の直後、
放射性物質が海沿いに拡散しなかったことは実証されている。
岩手県宮古市の場合、
福島原発からの距離が東京より遠いこともあって、
はっきり云ってしまえば「放射能汚染は東京以下」の地域である。
放射能があろうがなかろうが
余所のゴミを引き受けるのは嫌だという住民感情は解らないでもない。
だが、そこに反対の理由として放射性物質の問題を持ち出すのは、
合理的な根拠のない闇雲な不安感にかられてのこととしか思えない。

「福島」だの「東北」だのというレッテルで判断すべきではない。
そして、放射能を「排除」の理由とすべきではない。
それを許すならば、
差別の対象はいつしか「日本」にまでエスカレートし、
ぼくたち自身が「差別される側」になるのは間違いないはずである。



10 件のコメント:

  1. コメントが消えます

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  2. コメントできないです。

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  3. 他所の人間からみれば、さっさと別の土地へ引っ越すべきだと僕も思います。
    でも、人それぞれ、自分の生まれた土地、故郷への思いがあります。
    まして、それがなんの心の準備もなく、汚染されたとなれば、普通の引越しとは違ってきます。
    まして、精神的に不安定な状況で奪われたとなれば。
    年配の方は余計、心の余裕がないと思います。
    僕は、新潟市在住ですが、第2水俣病を思い出しました。
    水俣病患者なのに、差別を恐れ救済措置の申請をしなかったり、別の土地に引越し生まれ育った故郷を隠して生活した方々がいたそうです。
    安全な場所で当事者意識がない野次馬は、安易に Hatespeach できると思います。
    もやは、こういう状況 ↓ は Hatecrime!! http://blogs.yahoo.co.jp/ayumu_kun2005/11868806.html

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  4. うなさん、ごめんなさい。
    なぜかコメントが表示できない現象が以前から頻発しています。
    ぼくにも理由は判りません。
    でも「匿名」だと投稿が可能なのかな?
    投稿するブラウザによるのか、いずれにせよGoogleの不具合なのでしょうが…。
    ブログは後で読ませていただくことにします。

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  5. ブラウザによる不具合は・・・

     コメントを 「プレビュー」してから
     「投稿」 すると
     うまく反映される場合が多いと思いますよ。

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  6. 岩手県から関東にかけて、放射能汚染が広がっているのは事実です。この汚染は拡散すべきではありません。瓦礫の受入は、確実に汚染拡散につながります。瓦礫の受入に反対している人々の中に、「放射能があろうがなかろうが、余所のゴミを引き受けるのは嫌だという住民感情」を持っている人を私は一人も知りません。
    その様な人は、汚染瓦礫の受入反対運動はしません。福島や東京など、汚染地域から避難されてきた人々を汚染のない地域として受け入れたいと考えるからです。瓦礫を受容れることで、日本中を汚染地域にすることに反対しているのです。東京都の瓦礫受け入れについて、「放射能汚染は東京以下」と言われますが、東京の汚染は強烈です。瓦礫を受容れれば、更に東京都民は追加の被曝を受けることになります。近い将来、東京からの人口流出の恐れさえ感じています。
    また、原発近くの相当地域は100年以上は戻れないことが予想されます。非情ではありますが、これが原発事故の実態だと思います。
    なお、選択肢がないので、「匿名」としましたが、私は、twitterでは、「ハイハイおじさん」です。

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  7. >ハイハイおじさんさん

    「瓦礫を受容れれば、更に東京都民は追加の被曝を受けること」にはならない、
    とぼくは考えています。
    瓦礫からは、ごく微量の放射線しか検出されていないからです。
    「少しでも汚染があれば…」という考え方は、
    結局は「排除の思想」となり、ぼくは共感できません。

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  8. 一度、今の状況を法律上はどうなっているかと言う番組を作って欲しいです。
    一般公衆の被曝限度1年1ミリ、管理区域内1年5.2ミリ。
    1平方メートルあたり40万ベクレルは放射性物質、1平方メートルあたり4万ベクレルは直ちに事業者(東電)が除染しなくてはならない。とりあえず素人の私が知る範囲ではこのくらいの事が法律で決まっているそうです。今の状況は法的にどうなっているのか、皆知っておくべきです。そしてそれが非現実的であるなら、どうするか。そういう順番だと思います。
    瓦礫や汚染された農作物分かち合いは、皆で広く平等に被災者の負担を請け負う、ではなく、弱い人、子供、運の悪い人に犠牲になってもらうという事です。

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  9. >うなさん

    後出しジャンケンで事故後に規制値を変えたのは問題だとぼくも思います。
    国に法令遵守を要求する動きが弁護士などから出始めているようです。

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  10. 瓦礫の話なのですが、テレビのニュースなどで担当の方が「丁寧に説明することが大切だと思います」と言ってくれるのですが、その丁寧な説明を聞いたことがありません。せいぜい「何回も放射線値を計っています、規制値以下です」ぐらいです。それでは安心できないのです。規制値は信じられません。インタビュアーには数値を聞いてもらいたいです。私が知りたいと思うのは、移動の際や最終的に環境にどれくらいの放射線が出るかです、それを数値で、しかも分かりやすい数字、つまり何ミリシーベルト、で教えてほしいです。ホームページを見てくださいではダメだと思います。

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