2011年9月17日土曜日

果てしなき除染




南相馬市での撮影を続けている。
大量の放射性物質が降り注いだ町で
住民が安心して暮らしていくためには、
環境中の放射線量を下げる「除染」が喫緊の課題なのだが、
残念ながら順調に進んでいるとは言えない。

原発事故の後、多くの人が田や庭に向日葵を植えた。
土壌に含まれるセシウムを吸い上げるからだ。
写真は福島第一原発から20km圏、
立入禁止の「警戒区域」との境界に植えられた向日葵である。
植えた向日葵はそのまま枯らしてしまうわけにはいかない。
せっかく取り込んだセシウムが土に戻ってしまうからである。
枯れる前に刈り取って、
シートなどにくるんで隔離するなり、
放射性物質を吸着するフィルターをつけた焼却炉で焼くしかない。
しかし、行政で貯蔵施設や焼却炉を用意しているわけではないので、
植えたのはいいが処理に困って途方に暮れている人が少なくない。
なかには、やむを得ず、土にすき込んでしまう人も現れている。
これでは元の木阿弥である。

今年、耕作をしなかった田は荒れ放題である(写真中)。
セシウムは地表から5cm以内の土に多く含まれているので、
表土を剥ぎ取ってしまえば一気に除染の効果が上がる。
しかし、それには1㎡1800円前後の費用がかかり、
またどこからか新しい土を運んできて客土しなければならない。
この地方には1ha以上の農地を持つ農家が珍しくないから、
費用の面でも土の確保の面でも実現不可能な話になってしまう。
そこで、国や農協では、
耕耘して深いところの土と混ぜるように指導している。
汚染された土をきれいな土と混ぜることによって、
言わば「薄める」ことができるからだ。
しかし、薄めたところで土に含まれるセシウムの絶対量は変わらない。
セシウムの濃度が国が定めた暫定規準以下であれば、
その農地でとれた作物を消費者は買ってくれるのだろうか。
到底そうは思えないから(それは必ずしも「風評被害」ではない)、
「薄める除染」の結果は、
売れない作物を大量に作ってしまうことにもなりかねない。


いくら洗い流しても放射性物質はなくならない。
場所が移動するだけである。
だから、除染は、
結果として汚染を凝縮した廃棄物を作ることになる。
廃棄物を環境から隔離して、初めて除染が完結するのである。
ところが、放射性廃棄物の処理場建設の目処はいまだ立っていない。
除染は急がなければならないが、
その一方で早急に処理場を確保することができなければ、
一生懸命に除染すればするほど
危険が凝縮されたホットスポットを作り出すことにもなってしまう。


従来の公害病とは比べものにならないほど広範な地域で
住民の生活環境そのものが汚染されてしまったという現実は、
あまりにも重く、取り返しがつかない。
東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授が
建設業者(ハウスメーカー)に依頼して試算させた除染費用は、
住宅一軒につき560万円であったという。
住民が安心して生活できるところまで地域全体を除染するとしたら、
ちょっと想像もつかないほどの資金が必要となる。

様々な矛盾が傷口を開き、血を滴らせているというのに、
国の動きは相変わらず遅い。
放射能に脅える住民のなかには、
これ以上待ってなどいられないと、
自分で資金を工面して自宅の除染に着手する人も現れている。
きょう取材した老婦人は、
100万円を投じて業者に依頼、
汚染された土や庭木を取り除き、
庭をコンクリートで固めるなどの除染を始めるつもりである。
費用は後で東電に請求するのだという。
「他人の家に勝手に上がり込んで
汚していったのだから当然でしょう?」という。
…こうした人たちが今後はどんどん増えていくような気がする。

東電は、現在までのところ、除染を補償対象とはしていない。
しかし、各地からの請求書が殺到し、
あるいは除染費用の支払いを求める提訴が相次ぎ、
二進も三進もいかなくなるのではないかとぼくは予想している。
(下の写真は南相馬市の中心部、原ノ町駅前の夕景)

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