再び福島県南相馬市を訪れた。
この町の内陸部、
福島第一原発から北西方向にあたる山あいに、
7月下旬から8月にかけて122地点の「特定避難勧奨地点」が設定された。
計画避難区域に指定するほどのエリア的な広がりはないが、
高い放射線が測定されている、いわゆる「ホットスポット」である。
こうした場所では、
住民の被曝が年間許容量(現在は20ミリシーベルト)に達する怖れがある。
南相馬市では131世帯がこの「特定避難勧奨地点」でいまも生活しており、
避難するのかどうか意向調査が行われているところだ。
(ただちに避難しなければならないほどの線量レベルではない。)
こうした場所では毎日放射線量のモニタリングが行われ、
測定結果が市の広報誌で公開されている。
写真の場所は如何にも穏やかな農村風景が広がっているが、
7月20日から25日までのあいだ、
1時間あたり平均2.6マイクロシーベルトの放射線が検出されている。
住民が一日12時間を屋外で過ごし、
住居内には放射線がゼロと仮定して一年間の被曝量を計算すると、
およそ11.4ミリシーベルトということになる。
避難基準の20ミリシーベルトを下回ってはいるが、
内部被曝の影響などが現在完全には解明されていないことを考えれば、
安心できる数字だとはとても言えないだろう。
細胞分裂の活発な成長期の子どもの許容量は年間1ミリシーベルトだから、
子どもや妊婦は生活できない場所ということになってしまう。
立ち入り禁止の警戒区域や人が住めない計画避難区域、
生活できるものの緊張が強いられる緊急時避難準備区域に加えて、
こうしたホットスポットが市内に点在することは、
南相馬市がこれからも人が住める町であり続けるためには大きな障壁となる。
ホットスポットの除染が緊急の課題として浮上してくるわけだが、
自然の豊かな場所だけに、
ただ洗い流せばそれですむということにもならず、
除染には思いもかけない困難がつきまとう可能性が少なくない。
環境中に大量の放射性物質がばらまかれた現実は事前の想定を超えており、
研究者も含め、誰も経験したことのない事態に直面しているのである。
ホットスポットの、皮肉にも心休まるような田園風景を眺めながら、
南相馬の人たちが、
そして潜在的にはこの国に暮らす総ての人たちが向き合わざるを得ない、
原発事故という現実の堪え難いまでの重さを直視してみる。
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