休めない休暇

釧路の我が家に帰ってきた。
去年の10月以来だから、半年以上帰っていなかったことになる。
仕事が忙しすぎてなかなか暇が出来ず、
3月下旬に帰る予定を組んでいたのだが、それも3.11で吹っ飛んでしまった。
ゴールデン・ウィークを釧路で過ごすのは、たぶん10年ぶりくらいだ。

きょうは天気がよく、
飛行機の窓からはまだ雪をかぶった東北の山々がよく見えた。
一枚目の写真は、たぶん左が月山、右が鳥海山である。
釧路空港に降り立つと気温が7.5℃で、吐く息が白いのでさすがに驚いた。
一昨日まで沖縄にいたわけで、あらためて日本列島の南北の長さを実感する。

ぼくが初めて釧路に足を踏み入れたのは32年前の6月で、
「霧と蒲公英の街」というのが第一印象だった。
その頃から、釧路の街の佇まいには独特のもの哀しさがあった。
すでに200海里の漁業専管水域が設定されており、
札束を腹巻に押し込んだ漁師たちが闊歩した北洋景気は過去のものになっていた。
街にはどこか落日の匂いが染みついていて、
若くネクラだったぼくはそこに惹かれたのである。
その後の釧路は、
地場産業がおしなべて衰退ないし壊滅したから、もの哀しさもいや増すばかりだ。
(二枚目の写真は城山歓楽街。ここは30年前から既にうらぶれていたが…)
街を歩くと廃屋が目につき、
まるで津波の直撃を受けたかのようにも見える(写真三枚目)。

我が家にたどり着いて、冬のあいだ落としていた水道の栓を開けると、
水が凄まじい勢いで浴室に奔出した。
ひと冬まったく火を入れなかった室内は冷えに冷えて、
蛇口のなかに残った水が凍って膨張し、
蛇口の後ろのところの金属(ホーロー)を引き裂いてしまったのである。
さらにトイレの(ウォシュレット用)タンクからもダボダボと水漏れ。
これは3.11(釧路は震度4だった)の揺れで安全装置が働いて温水装置が停止、
タンクの中の水が凍ってしまったためと思われる。
この家に17年ほど住んでいるが、こんなことは初めてである。

こうなると休暇どころの話ではなくなる。
まず水道屋に電話をして修理の依頼。
連休中だから危ぶんでいたのだが、
すぐに対応してくれるところがあって助かった。
続いてTOTOのメンテナンス担当者に来てもらって故障箇所の点検。
古い型式のものなので部品がなく、
便座ごとウォシュレットを交換するしかないという話である。
ちょっと凝って色を濃紺色にしていたのだが、いまはもう生産していないという。
修理に要する費用を訊くと「10万円くらいですかね」…目の前が真っ暗になる。
そのうえ、在庫がなくて取り寄せるのに一週間はかかるという話。
休暇は日曜までで、月曜日には東京に帰る予定だから、とても待っていられない。
やむなく歩いて10分ほどのホームセンターに行ってみると、
TOTOのウォシュレット用便座を2万7千円ほどで売っていた。
即買って担いで帰って自分で取り付ける。
安く迅速に直ったが、ツートンカラーの妙なトイレになってしまった(写真下)。

庭に敷く煉瓦状のブロックを注文に行ったり、
夜になって電気を点けようとしたら電球が切れていたりして、
結局、ホームセンターまで三往復するハメになった。
…こうして釧路での休暇初日はドタバタのうちに暮れた。
ぼくは行きつけの焼肉屋「じっぴー」で敢えて生肉(ユッケ・ミノ)を喰う。
亡くなった方には申し訳ない言い方だが、
ユッケを280円で出す業者も業者なら、注文する方も注文する方だ。
ものには「適正価格」というものがあるはずで、
それ以上の「激安」にはやっぱりそれなりの理由があると思っている。
ちなみに「じっぴー」のユッケは750円で、東京感覚から云えば充分に安い。

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