Hard Day's Night は、さんまを食ひて思ひにふける…


きのうの夕方、釧路に帰ってきた。
空港に着いたら気温が21.5℃なので嬉しくなった。
猛暑からの脱出…生き返った気分。
今朝はまたよく晴れて、
窓を開け放つと爽やかな風が吹き込んでくる。
東京や大阪の酷暑が別世界の話に思え、
極楽、極楽…と呟いてみる。
もっとも。
ぼくの休暇は忙しい。
のんびりなんて、してはいられないのダ。
我が家の裏庭では、
ハルニレの樹が異常なほど「横に成長」している。
これは枝を払ってやらなければならないだろう。
周辺の雑草も目を覆うばかりだ。
草刈りの手間を考えると、うんざりしてくる。


ぼくにとって、
釧路で過ごす休暇とは
「土木作業の時間」に他ならない。
きょうはまず、
前回の休暇に引き続き、
裏庭から玄関までの舗道を作る作業。
きのう買ってきた100個あまりのブロックを
家の横を沿うように敷き詰めていく。
草を抜いて、土を均し、
凸凹になり過ぎないようにブロックを置く。
時間がかかり、根気が必要な作業である。
ブロックを敷き終わると、
今度は隙間を水で溶いたモルタルで埋めていく。
昼めしを食べる暇もなく、夕方まで続ける。
ずっとしゃがみ込んでの作業なので、腰が痛い。
これなら仕事をしていた方がずっと楽だと思う。

16時過ぎで舗道作りを一旦中断して、
ひとっ風呂浴び、夕食のおかずを買い出しに行く。
夕食まで食べられなくなるのでは、カナワナイ。
午後から霧が深くなり、
歩いていると水滴が顔に当たるのを感じる。
こうした濃霧をこの土地では「じり」と呼ぶ。
釧路も昨今では霧が出なくなったので、
これほどの「じり」は久しぶりだ。
港には、カジキの突きん棒漁船が碇泊している。
メカジキを追って釧路沖にまで来たのだが、
ここ一週間は不漁続きだと漁船員がコボす。

和商市場では、
秋刀魚とトキシラズ(春に沿岸に近づく鮭)、
ホッキを買い、
庭に持ち出した木炭用のコンロで焼く。
へとへとに疲れた夜は、たった一人で宴会気分。
ビールを呷り、日本酒(司牡丹)を湯呑みでやる。
不漁が伝えられる秋刀魚は一匹140円、
例年であれば80〜90円だから確かに高い。
脂の乗りもイマイチなのだが、鮮度は抜群。
秋刀魚に目のないぼくは、
大根おろしにスダチを搾って、
真っ黒に焦げたヤツにまぶして貪りつく。
釧路の夏は秋刀魚である。
何がなくてもこれだけはなくてはならない。

さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか…
佐藤春夫の歌では「青き蜜柑」を絞るんだっけ。

男ありて きょうの夕餉にひとり
さんまを食ひて 思ひにふける…

この歌は確か高校の教科書に載っていたはずだ。
谷崎潤一郎夫人との不倫の恋を題材にしたもので、
(夫人は谷崎の許に戻り、佐藤は独り物思いに沈みながら秋刀魚を喰うのである)
こんなの高校生に教えてよかったのだろうかと、いまになって思ってみたりもする。

コメント

  1. こちらでははじめまして。mixiでお世話になっているMCです。

    今年の釧根は、この時期になっても気温が20度を超え、皆、「暑さ」でひいひい言っています。

    おかげでサンマも不漁で、大きさも脂も例年に比べ今イチですね。
    加工場や製函関係のバイトさんも、自宅待機を余儀なくされて、地元景気も低迷しそうな気配です(泣)。

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  2. みちくささん、ご無沙汰しています。

    ぼくの釧路の友人も「今年はすっかり夏バテだ」とこぼしていました。
    元釧路在住者としてそのキモチはわかるのですが、
    東京や大阪の人を思えばバチが当たるぞ、とも思ったりして…(笑)。

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