2010年7月18日日曜日

海はときには牙を剥く。


連休の中日とあって
大島を訪れる客がどっと増えた。
体験ダイビングを申し込んでいる人も多く、
「グローバル」でも
スタッフはてんてこ舞いの騒ぎである。
ところが、皮肉なことに、
海の状態は悪くなるばかりだ。
一本目は「秋の浜」に潜ったが、
透明度は最悪で2〜3mの範囲しか見えない。
海の中は真っ暗である。
カメラをやる人間はまだ
小物を撮っていればそれなりに愉しいが、
(写真は1cm大のサンゴハナビヌメリの幼魚)
体験ダイビングの客にとってみれば、
爽快や解放感にはほど遠い、
ちょっと残念な「体験」になったことだろう。

「秋の浜」の状態が悪過ぎるので、
午後はきのう強烈に潮が流れていた「ケイカイ」。
同じことを考えたショップが多いらしく、
ケイカイはちょっとしたラッシュ状態だった。
ぼくらが潜ろうとすると、
すれ違いに上がってきたグループのガイドが
顔面蒼白になっている。
客の一人が潮に流されて行方不明になったという。
ぼくらが潜っていると
必死の形相で沖に向かって泳ぐガイドとすれ違った。
また一人、流されて行方不明になったのである。

実のところ、
潮は昨日に比べればまだしも穏やかだった。
しかし、きのうは、
ぼくを含め屈強な(?)男の客ばかり4人で、
全員がある程度経験を積んだダイバーだった。
ところが、今日は連休のレジャー日和で、非力な女性客も多いし、経験の浅いダイバーも潜る。
客の数が多いから、当然、ガイドの目は全員に行き届きにくくなる。

レジャー・ダイビングは、
アウトドア・スポーツとしては、かなりヌルい部類に入るのは間違いないだろう。
しかし、それでも、自然と向きあう以上、ひとつ間違えば死と直面することは覚悟しなければならない。
ダイビングにしても、カヌーにしても、ここでひとつ間違えば俺は死ぬなあ…と思ったことは少なくない。
アウトドアを愛好している人間なら誰でも同じ経験があるはずだ。
極言すれば、死と直面している自覚と覚悟のない人間は手を出さない方が無難なのである。
まさに「自己責任」の世界で、いざというときに自分自身を助ける自信のないヤツはやらないほうがいい。

行方不明になった二人の客は、ともにひとつ向こうの浜まで潮に流され、そこで上陸して無事だった。
なによりである。
その一人(女性)と言葉を交わす機会があったが、
沖に流れる潮に乗らないことだけを心がけて、
海の透明度をそれなりに愉しみながら流れていたのだという。
たぶんパニックに襲われなかったのが大事に至らなかった理由で、
恐怖に駆られパニックに陥ると人間は常識ではとうてい考えられないことをする。
ぼくはかつて暗い流氷の下の海で
パニックに襲われて自分でレギュレーター(=命の綱)を外してしまったダイバーを見たことがある。
それもインストラクターを務めるほどのベテランで、
酷寒と慣れない環境のなかで自分を失ってしまったのである。
ぼくは自己修練のためにダイビングをやっているわけでもなんでもないが(笑)、
ときどき自分の沈着さを図るバロメーターにはなるなと思うことがある。

ところで、ぼく自身のダイビングだが、
水温の変化が激しかったためかカメラのハウジングの内側が曇ってしまって手も足も出なかった。
しょうがないから写真は諦めて、
大物が出ないかと岩の上に坐って水面を眺めていたが、そういうときに限って何も出てこないものである。
…こうして、ぼくの夏の大島は、いくらか不完全燃焼の余韻を残して終わった。
近々リベンジを図るつもりで、ダイビング器材はすべて島に置いたまま東京行の高速船に乗った。

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