“男の城”

釧路に帰ってきて一夜が明けた。
きのうの雨は、朝には上がっていた。
昨夜ほどの寒さは感じない。
午後には雲のあい間から青空が見えた。
かと思えば、
夕方にはバケツをひっくり返したような雨。
…なんとなく異常な天気である。

雨が上がったので
家の裏手にまわってハルニレの木を見る。
もう十数年前に植えたもので、
遅々として生長しなかったのが、
去年あたりから急に枝を伸ばしてきている。
北海道の森を甦らせようと努力している
二風谷の貝澤耕一さんによれば、
日差しを遮る障害物がないと
木は丈を高く伸ばす必要がないので、
枝を横にいっぱいに張ることで
より多くの日光を浴びようとするという。
このハルニレは家の南側にあることでもあり、
競争せずにぬくぬくと育っているとおぼしい。

天気が回復したので、掃除を始める。
床にクリーナーをかけ、
そこら中に張っている蜘蛛の巣を払う。
生活の場を追われることになる蜘蛛たちは
恨みがましい眼でぼくをみるが、
家賃をもらっているわけではないので
知ったことではない。
この家は間取りや家具の配置など
ぼく自身が図を書いて建ててもらったもので、
いま考えると実用的とは云いかねる、
道楽としか表現しようのない造りになっている。
ローンがまだまだ残っているので、
いつもかみさんに叱られているわけなのだが…。

しかし、まァ、
それだけに愛着もひとしお湧こうというものだ。
音楽の好きなぼくは
古いタンノイの中古を買って置いている。
アンプは25年ほど前に買ったアキュフェーズで、
しばらく実家で鳴っていたのが
故障して放置されていたのを直して使っている。
当時20万ほどしたもので、
2年ぐらいの月賦で買ったと記憶する。
そんなこんなのすべてが妻の怒りを買う。
しかし、
女なんぞにワカるはずもないのだが、
これは“男の城”ともいうべき究極の心の贅沢なのである。

コメント

  1. 家の様子懐かしく眺めた。
    あちこちにある段差、やれやれ年寄りが住める造りではない。
    せいぜい今のうち夫婦で楽しむが良い。
    とにかく無事に海に潜るのお祈っている。

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  2. >親父殿

    けっこう住みやすい家だと思うのだが、確かに「バリアフル・ハウス」だ。
    建てるときに老後のことを考えていなかったのは事実だけど、
    当時はそんなに長生きする気もなかったしなあ…。

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