番組のオンエアが終わって、
きのうが祝日だったこともあり、
ちょっとエアポケットに落ち込んだような脱力感のなかにいる。
きのうはPhotoshopで年賀状の原稿を書いてヨドバシカメラに発注、
(28日の仕上がり…ここ何年ものあいだ元旦に届くスケジュールで年賀状を出したことがない)
夜はかみさん手作りの餃子(旨かった!)を肴に、
カメラマンのS君夫妻、編集の「ほっちゃん」を招いてささやかな忘年会をした。
そして深夜、ジェフリー・ディーヴァーの新作「ソウル・コレクター」を読み了えた。
ぼくはディーヴァーにはまっていて、
とりわけ「車椅子の名探偵」リンカーン・ライムのシリーズが大好き、
長編はライム一行がいつものニューヨークを離れた「エンプティー・チェア」を除いてすべて読んでいる。
そのなかでのベストが、この「ソウル・コレクター」であると断言する。
今回ライムらが追う犯罪者は、
情報システム企業のコンピューターに蓄積された個人情報を利用して殺人を繰り返す、
まさに「シリーズ最強の敵」というにふさわしい存在だ。
背景として描かれるのは、
カードやインターネットの利用、
あるいは商品に取り付けられた情報発信機能付きのタグを通して、
情報システム企業(作中「データマイナー」=情報発掘者と表現される)に
膨大で詳細にわたる個人情報が蓄積され、分析・管理されているという身の毛もよだつような状況である。
小説だから誇張されている部分はあるにせよ、全く根も葉もない話ということではあるまい。
9.11以降、テロリストの動向を事前に把握するために、
アメリカ政府も「データマイナー」の情報収集(と利用)に一枚噛んでいるというのもありそうな話だ。
(世界中をとびかうメールのうちアメリカ国内の回線を経由したものは、
アメリカ政府によってすべてスクリーニングされているのは知られた話である。)
犯人は、この膨大な個人情報にアクセスできる立場にいて、データの改ざんもできる力を持っている。
アメリカはカード社会で、ちょっとした買物にもクレジットカードを使う。
インターネット・ショッピングも発達している。
だから、狙われた被害者は、
犯人に消費動向や趣味嗜好などの生活パターンをすべて把握されており、行動予測されている。
そして、この圧倒的なパワーを持つ犯罪者は、「犯人」として捕らえられる「生け贄」をも用意する。
「生け贄」とされた人たちは、
自分が最近購入したものと全く同じ商品の数々が犯罪に使われ、
物証として現場に残されることから、身に覚えのない罪を着て逮捕されることになる。
真犯人は「生け贄」の生活行動も把握していることから、当然、アリバイのない時間が狙われるのである。
…これはコワイ話である。
我が家もインターネット・ショッピングやカードの利用が日常茶飯事だから、
このストーリーには他人事ではない恐怖をおぼえる。
その恐怖感は、
ライムの公私にわたるパートナーであるアメリア・サックス刑事の
職歴や過去の人間関係までわたる膨大な個人情報が開示されるシーンで頂点に達する。
情報社会において人知れず蓄積されたデータを知悉し、自由に改ざんさえ行なう犯人は、
ライムたちが捜査が身辺に迫ったことを知るや、
ライムの部屋の電気を止めたり(電力会社の顧客データに入り込んで、「料金未払い」に書き換える)、
サックスの愛車カマロをレッカーしてスクラップにしたり(ローン滞納・回収にデータを改ざん)、
捜査にあたるメンバーに対しても、
麻薬の使用が明るみに出たことによる停職に追い込んだり、
アメリカに生まれ育った家族を不法移民として入管に収容させたり…とやりたい放題の攻撃を仕掛ける。
データという名の“現代の暗黒魔力”を駆使するこの恐るべき犯人に対してライムらはどう立ち向かうのか…
ディーヴァーは相変わらずの巧みな話術を駆使して読者を騙し、裏切り、翻弄していく。
こんな小説が面白くないわけがない。
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