2009年9月17日木曜日

番組「社長たちの決断」完成…作者敬白

きょう字幕を入れて番組が完成した。
7月5日に沖縄から帰って来て始動したので、
実質二ヶ月半で完成に漕ぎ着けたことになる。

舞台は北海道旭川市。
主人公は、
佃煮・煮豆などの食品加工会社「藤六食品」を
7月に倒産させてしまった捧範行社長(57)である。
契約栽培で作った減農薬の豆を使うなど
地元北海道の原料にこだわり続けてきたが、
安価な中国産・カナダ産の原料を使う業者との
価格競争に敗れ去ってしまった。
(写真は剣淵町の豆農家を視察に訪れた捧社長=右)
中小企業の経営者は銀行融資に個人保証を付けるため、
倒産すると莫大な負債を抱え個人破産するしかなくなる。

もう一人の主人公が、
この会社の再建を手助けすることになった
株式会社北海道村(道内では「バンビ・キャラメル」で知られる)の庄子敏昭社長(59)。
庄子社長も旭川出身で、捧社長とはかつて娘同士が同じ保育園に通っていたため親交がある。
それもあって、倒産した会社の再建という難題に挑むことになった。
捧社長のたっての要望で、従業員を一人もクビにすることなく、全員を再雇用しての再出発に取り組む。

そこに、毎年黒字の堅実な経営を行ないながら、
後継者がいないため庄子社長に会社を売って後を託した
旭川きっての菓子の老舗・梅屋の山本憲彦元社長(65…現在は会長)がからむ。
つまり、これはリーマン・ショックに端を発する深刻な不況(というか転形期)のなかで、
老いを迎えようとする中小企業のオーナー社長たちの「決断」=「人生の選択」の物語なのである。

試写が終わって、
プロデューサーのM君(ぼくより10歳も若いが、れっきとした上司である)が
「もっと思い切ってナレーションを減らしてもよかったかもしれませんね」と言った。
ぼくはそもそも「説明」が嫌いなのでナレーションは少ない方なのだが、無念、まだ減らせたか…。

ぼくに言わせれば、番組がナレーションでモノゴトの意味を解説しようとする昨今の風潮は愚の骨頂で、
「意味」は番組を見て下さった方が自分なりに汲み取ってくれればいい話である。
テレビというメディアは「映像」をもって物語られるべきで、
そして、「映像」とは本来曖昧なものであり、様々な意味に解釈できる多義的なメディアである。
その曖昧さ(多義性)は、実は「映像」の限界ではなく、可能性なのである。
そこを間違えて安易な(言葉による)意味づけに走っては、テレビというメディアは自滅する。
ナレーション、つまり「言語」は、
映像を理解するための「補助線」であればよく、それ以上のものではない。
だから、ぼくはできるだけナレーションを減らしたい。
第一、ナレーションが少なければ、台本を書くのが楽でいい…。

ともあれ、今回の番組は、
登場人物の表情と会話(ぼくは会話も映像のうちだと考えている)を愉しんでいただきたい。
「愉しんで」という表現は誤解を生むかもしれないが、他に適切な表現がないからそういうのだが。
作り手としては、
2009年という時代を生きている
名もなき人たちの喜怒哀楽の一端を切り取ることができていれば本望である。

ETV特集「社長たちの決断 〜生き残りを模索する中小企業〜 」
9月20日(日)夜10時 教育テレビにて放送(60分)

13 件のコメント:

  1. このコメントはブログの管理者によって削除されました。

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  2. 目指せ 視聴率 2% 突破!!!

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  3. あはれ
    わが若き日を燃えし希望の 
    今ははや暗き空へと消え行きぬ…(中也)

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  4. 今度、ダメな会社が潰れるまでのドキュメントって
    出来ないもんですかねぇ?

    近年、経営者の質が著しく低下していると思うので。

    まぁ、取材に応じないからムリでしょうけど…。

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  5. >等々力さん

    それができれば面白いんですけどね…。
    でも、それは、
    取材する側にとっても辛い、
    残酷な取材になるでしょうね。
    なにせ被写体である当事者たちは、
    誰一人として会社が潰れるとは思っていないだろうから。
    取材する側が、
    これから起こることを
    あたかも神のように予知できてしまうことは、
    神ならぬ身には辛いことだと思います。

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  6. アニキ、ダメな会社の場合社長は必死ですけど、
    基本的に社長がガンの場合が多いから、
    働いている人間のほとんどが
    『こんな事やってたら潰れるな』と思いながら労働してますよ。
    第三者から見ればそれが余計に際立ちます。

    さながらコメディでも見てるような感覚になるかも知れませんよ。

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  7. こんにちは。

    番組を見させて頂きました。
    今の中小企業の、北海等経済の置かれた
    環境が良く出ていました。

    良い食品を作ろうとする社長達を
    何故金融機関がフォローできないのか。
    ここまでM&Aの波が及んでいるのかと
    驚きました。

    ちょっと気になったのは、社長の経営方針です。
    良いものを作ってさえいれば売れるだろう、
    親の代から同じやり方で消費者の顔が見えていない等。
    この辺は庄子社長から指摘を受けていたが・・・。

    でもテーマは「社長たちの決断」。
    社員と生産者を守ると言うのは果たせたと思います。

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  8. シゲさん、ご無沙汰しております。
    そして、番組を見てくださって有難うございます。
    いいものを作るだけでは企業の存続を望めない時代、
    なのだと思います。
    こだわりが消費者に届かなければ意味がない、
    しかし、届ける回路を持たない、
    あるいは届ける知恵(ノウハウ)がない、
    そんな中小企業が日本中にあってくるしんでいる、
    その氷山の一角をみた気がする取材でした。

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  9. 番組,拝見しました.
    まず,中小企業倒産の責任が有限ながら社長にとっていかに厳しいものかを改めて考えさせられました.私は公務員から特別職になり責任が一段と重くなったと思っていましたが,民間の世界は数段厳しいですね.
    もう一つ考えたのは,「質」のことです.提供する側のSPECに適合した「質」と購入,消費する側の「質」は随分と乖離しています.
    淘汰されることが少ない私たちの世界でより顕著だと思いますが.
    大変勉強になりました.
    良い番組と思います.

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  10. 佐藤先生、ありがとうございます。
    不況のなかでは、
    日常的な食べ物の質は
    一番最初に切り下げられる対象のようです。
    安心も安全も吹っ飛んで、
    ともかく安いものを、というマインドになるようですね。
    世の中の多くの人にとっての優先順位が
    おかしいんじゃないかと思うこともしばしばですが… 。
    医療・福祉と並んで
    「食」が価値観の中心に置かれるべき時代だと思いますが、
    なかなかそうはならないようです。

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  11. 繁忙期が終わり、ようやく腰を落ち着けて、本日オンデマンドで番組を拝見しました。

    Toriさんの予告どおり、際立った“登場人物たち”の群像に圧倒されました。毎度ながらToriさんの番組では裏オーディションでも開かれているんでは?と疑ってしまいます(笑)。

    皆さん、それぞれの主義にのっとって“真っ直ぐに”生きていらっしゃいますね。賛否はあるでしょうが、特に捧社長の姿にその感を持ちました。失礼ながら、一見甘さや弱さが前面に出ていらっしゃいますが、会社の倒産という事業者としての“敗北”を全面的に受け入れていらっしゃる。まずはその事実をしっかり踏まえて、M&Aという最終的な“決断”がなされただろうことが番組を通して伝わってきました。中途半端な未練や執着が再建を困難にさせることは第三者にとっては明らかなことですが、当事者(経営者)となるとそう簡単にはいかない気がします。堅実的な考え方の山本社長の話を通して、客観的な視点の重要性を改めて感じました。

    それにしても自らの暗部を公にさらけ出せる捧社長は、やはり“強い人”だと思います。祖父の時代から受け継いだ家業を最盛期までに牽引した社長としての度量を垣間見た気がします。また残念ながら番組には登場されませんでしたが、捧社長を影で支え続けて来られたという奥様の存在も偉大だなぁと感じました。

    世の中小企業の社長たちが、辣腕の庄子社長のように次から次へとスピーディーな決断ができればいいのでしょうが、やはり判断力の“老い”というのはそう簡単なことでもなさそうですね。還暦を迎える庄子社長の言葉がとても印象的でした。ただし高額なセミナー料を払って経営セミナーに参加するくらいなら、年齢を重ねても最後まで自らの現場に立って意義ある“決断”を続けてほしいものです。

    どこもかしこも先行きが見えない世を憂いでいますが、正直もう飽きてきました(笑)。地に足つけて地道に商いに励みたいと思います。

    Toriさん、いつも良質の番組をありがとうございます。お疲れ様でした!

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  12. >エイコンハウスさん

    いつも番組を見て下さり、
    そして丁寧な感想を書いていただき、本当にありがたく思っております。
    そうか…オンデマンド、そういう時代なんですね(あらためて実感…笑)。

    捧社長については、
    ぼくが取材の時に最も鮮烈な印象を受けたのも、やはり、
    経営者として力が及ばなかったことを正面から受け止める潔さでした。
    敗北を直視する“覚悟”といっていいかもしれません。
    それがあって初めて、
    「延命措置」を断念して民事再生を申請するという決断、
    自身は自己破産を余儀なくされるものの、
    事業は庄子社長に引き継がれることで取引先への負の連鎖を最小限に抑え、
    従業員の生活も守るという選択が出来たのだと思います。
    また、これはここに初めて書くのですが、
    捧さんが普通なら拒絶反応を示すだろう番組出演を快諾してくれた背景には、
    事業を引き継いでくれる庄子さんの恩義に報いるために、
    少しでも新生・藤六食品(名前は変わるはずですが)のPRになれば、
    という強い意思が働いていました。
    親から引き継いだ事業の破綻という辛い局面に追いやられながら、
    常に「他人のため」を考えて動いていた
    捧さんという人の“強さ”がぼくには印象的でした。
    そういう人だからこそ、
    番組に出てきた農家の鈴木さんや、
    これは出番がなかったけれども、復刻版を扱う印刷工場の老社長など、
    損得を抜きに支えよう、応援しようという人たちが出てくるのでしょう。
    (庄子社長も算盤勘定だけなら決して再生を引き受けなかったと思います。)

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  13. >これはここに初めて書くのですが、・・・

    なるほど~捧社長らしい判断ですね。
    そして夕張の村上先生しかり、人が人を呼ぶ(集める)自然な連鎖(人的ネットワーク形成)って、やっぱりすごいですね。

    この番組を機に藤六食品だけでなく、捧社長の未来も再建されますよう願っています!

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