ラッシュ

火曜日から金曜日まで、編集室に籠もって撮影済みのビデオおよそ30時間を見た。
人物の動きやサイズ(1S=ワンショットとかGS=グループショット、あるいは「表情UP」など…)、
話し合いのシーンやインタビューであれば発言の要旨、
あるいは風景なら「夕陽→ZB(ズームバック)○○工場外うち」などと克明なノートを取りながら、
撮影してきた映像を見ていくのである。
「ラッシュ」といって、地味だが、編集作業の基礎になる大切な仕事である。

ラッシュを見ると、
現場にいた自分が思っているようには「撮れていない」シーンが随所にあってがっかりする。
自分で眠くなるほど退屈なラッシュを見たときなど、
もうこの番組はできないのではないかと絶望的な気分になったりする。
ときには思っていた以上に「撮れている」こともあるが、稀だ。
ドキュメンタリーはリテイクが効かない。
「撮れていない」ところは「使えない」のである。
「使える」シーンを軸に番組の全体設計をやり直すしかない。
つまり、ラッシュとは「素材の再発見」であり、
ディレクターが渾沌とした現実の中から見いだしてきたテーマを整理し、
もう一度現実と折りあわせていくために欠かせない作業である。

今回は幸いまだロケが残っているので、
「撮れていない」シーンを何かでカバーするチャンスがあるのが救いだ。
日々変化する現実をフォローすることに追われて、
まだ明確にテーマを掴み出せていないことも自覚した。
少なくない「宿題」を抱えて、明日からまた一週間のロケに出る。

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