北国の春


普段は夜中まで起きていてかみさんに怒られている「夜型」人間なのだが、取材に出るときは「朝型」に変わる。

撮影の方針を決めたり、仕事に関するアイディアが閃くのは、ほとんど朝だ。


「TVのディレクター」というとお気楽なギョーカイ人を想像されるかも知れないが、

これでけっこう精神的に疲れる仕事である。

一日に何人もの人と会って話を聞いたり、

様々な現場に立ち会ったり…

云わば、入力が多過ぎて、

ちょっとしたオーバーフローの状態になるのだ。

そういうときは、もともと酒が好きなところに加えて、さらに酒の量が増える。


以前、初めて入ったバーの老マスターに「精神労働の方ですか?」と訊かれたことがある。

酒の飲み方で判るものらしい。


疲れを酒で癒してホテルに戻って爆睡する。

家にいるときにはあり得ないのだが、日付が変わるか変わらないかのうちに寝てしまう。

それも、ほとんどの場合、歯も磨かず、ベッドの上に倒れ込むようにして意識を失う。

そして午前3時か4時頃に目が覚める。

それから仕事のことを考え始める。

そうすると頭が冴えてしまって、もう眠れなくなる。

結局、睡眠不足のまま取材に出て、夜にはへとへとに疲れて酒を飲み、倒れるように眠る…毎日がその繰り返しである。


昨夜は陸前高田市に泊まった。

駅についたのが夜の8時で、そのままタクシーでホテルに入った。

だから気がつかなかったのだが、今朝明け方にカーテンを開けると目の前に美しい沼が広がっていた。

こういうときは「朝型」で得をした気分になる。

北国・岩手もすっかり春めいてきた。

ホテルで朝めしを食べながらふと外を見ると、「千昌夫のふるさと」という看板があった。

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