8年前の番組の再放送

8年前に作った番組が再放送されることになった。
ETV特集の「核燃の村 苦悩と選択の記録」である。
2006年の1月に放送したものだ。


【放送当時のポスター】

青森県の六ヶ所村が
巨大開発や核燃料サイクル基地の建設計画に翻弄され、
村民のあいだに深刻な亀裂を生じていく過程を
過去の番組映像と関係者の証言からたどるもので、
先日放送した
 原型ともいうべき番組である。

去年、六ヶ所村を再訪して、
このときに出演していただいた方の多くが
すでに亡くなられたことを知ってがく然とした。
わずか8年が遠い過去のように思われたものである。
つい20年、30年前に起きたことなのに、
当事者として語れる人が
どんどんいなくなっている現実を思い知らされた。
逆に云えば、
8年前に証言を撮っておかなければ、
今回の番組が成立したかどうかは微妙なところである。

ぼくは
テレビ・ジャーナリズムの大きな仕事のひとつは、
「その時点の現実」をきちんと記録して
後世に残しておくことだと考えている。
ひとつの時代、
ある社会状況を背負いながら、
懸命に生きてきた名もなき人々の記録。
それを映像という生々しいメディアで残すことは、
何十年か後の視点で見直すときに、
同時代では把握しきれなかったことも含め、
必ず新たな意味あいを帯びてくるはずである。
ぼくはそういう思いで、
先輩たちが遺した映像記録を再構成して
8年前にこの「ETV特集」を作り、
今回新たに下北半島の戦後史と取り組んだ。
そしてまた、
いま自分の目の前にある現実を
数十年後の後輩たちのために遺していくつもりだ。

多少自画自賛っぽくなって恐縮だが、
原子力をめぐる状況、
NHKをめぐる状況が混迷を深めているいま、
この番組が再放送される意味は小さくないと思う。

15日(土)深夜0時、
日付でいえば16日午前0時からEテレで放送。
1時間30分の長い番組で、
方言に字幕を入れていないので
解りづらいところもあるかとは思いますが、
御用とお急ぎのない方はどうか御覧くださいませ。


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