青根温泉の静かな夜

今週は水曜日まで8日間の福島出張。
定点観測を続けている南相馬に加えて相馬、飯舘を撮り始めた。
木・金は事務処理に費やし(この業務量がバカにならない!)、
きょうは休日だが午前中は出局して、
津波に襲われた奥尻島を描いたドキュメンタリーをみた。
明後日、月曜日からはその奥尻島への出張で、
10日間のロケを行う予定である。
3つの番組を同時並行で進めているので、さすがに忙しい。

忙しいのは慣れているが、
さすがに疲れが澱のように溜まってくる。
胃が痛むので近所のクリニックで内視鏡検査を受けたら、
食道・胃・十二指腸ともにいたって健康で、
痛みはストレスから来ているのではないかという話。
確かに気分転換が必要なのは自分でも判っているので、
きょうは蔵王山麓にある青根温泉に出かけてきた。
以前訪れた峩々温泉の近くである。


青根温泉は16世紀の開湯、
伊達藩主の静養の場だったというから由緒のある温泉である。
湯治場を開いたお侍の末裔が
いまでも「不忘閣」という古風な日本旅館を経営している。


冬ということもあろうが如何にも静かなところで、
シャッターを下ろしている店も多く、
どこか時代から取り残されてしまったような風情もある。
山の空気が凛として清々しい。

ぼくが泊まったのは「岡崎旅館」というところ。
地酒5種の利き酒ができて11700円という値段に惹かれた。
この宿も本館の裏に昭和元年建造という古い木造建築がある。


湯治棟として使っていたものらしいが、
去年の地震で風呂場が壊れてしまったという話だ。
お湯は単純アルカリ泉でクセがなく、
温泉好きのぼくはいくぶん物足りなくも感じたが、
湯から出た後も体がほかほか温まって湯冷めがしない。
もちろん源泉かけ流しである。

入浴で渇いた喉をビールで潤し、
「蔵王」「乾坤一」などをちびちびやっていると、
(料理はなかなか旨い)
襖一枚隔てた大広間が賑やかである。
幼い子どもたちのはしゃぎ声、
部屋中を駆けまわる音が聞こえる。
妙に2~3歳の子どもの姿が目立つとは思っていたのだが、
どうやら保育園の保護者会でもあったのだろう。
ぼくはこれで子ども好きなので騒がしさがまるで気にならず、
むしろ微笑ましい気持で一人酒を飲んでいた。
これが中年おやじどものカラオケだと堪らないのだが…。
(ぼくも「中年おやじ」だが、原則としてカラオケはやらない)

子どもたちが親に連れられて部屋に消えると、
冬の宿はしんと静かになった。




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