旅はいいな…湯河原温泉・源泉 上野屋

きのう、今日と妻と二人で湯河原温泉を訪れた。東京駅から特急踊り子に乗って1時間15分ほど、湯河原駅はダイビングに行くときなど何度となく通っているが、下車したのは今回が初めてである。灯台下暗しという言葉があるが、東北の温泉に詳しいほどには関東の温泉は知らないできた。湯河原は古くから知られた温泉地で、東京から近いこともあり、夏目漱石など多くの文豪が通ったことでも知られる。

(源泉  上野屋…江戸時代からこの地で続く老舗の温泉旅館だ)

ぼくたちが泊まったのは「源泉  上野屋」という宿で、後で仲居のおばあさんに聞いたら創業3百年余りになるという。近所には同じぐらい古い旅館が多くあり、「○○屋」と名乗っているところはほとんどそうだという。泊めていただいた部屋は現存する最も古い建物で、大正12年に建てられたものだそうだ。「古い」と「粗末」の見境がつかない妻は少しぶつぶつ言っていたが、いい造りの和室で、ぼくはすっかり気に入った。宿は古いが畳は比較的最近替えたらしく、いい香りがする。

(大浴場・六瓢《むびょう》の湯)

風呂は敷地内にある自家源泉から引いたもので、泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉。84℃と高温なので、お湯張りのときにあらかじめ一定量の冷水を入れておくが、あとは終日、源泉100%のかけ流しだという。もちろん循環も塩素殺菌もない。

(「六瓢の湯」の名前通り、瓢箪型の湯口)

大浴場(六瓢の湯)の湯口は瓢箪型で、湯の花がこびりついてなかなかいい風情だ。体がとてもよく温まる湯で、風呂上がりの汗がなかなかひかない。

(貸切露天風呂・洗心の湯  千歳)
(部屋風呂は桧風呂。天気もあるだろうが一番ぬるめだった)

宿泊客は貸切露天風呂を無料で使え、(宿泊客が少ない日は予約不要)客室にも専用の桧風呂がついている。泉質は大浴場と同じで、冷水を張ったあとは源泉かけ流し。何度も入浴を繰り替えすと、新陳代謝が進むのだろう食が進む。ぼくは以前に比べてかなり小食になっているが、 (この春まで、どちらかといえば大食漢の部類だった)きのうは旅館の食事一人前をほぼ完食したので妻が驚く。

(造りの盛り合わせ、二人分である)

刺身の盛り合わせは鯛や鮪、ワカシ(鰤の幼魚)、ハタ、栄螺…。鯵のたたきがないのと練りワサビなのがちょっと残念。

(鮎の塩焼きは、香魚の別名通り、いい香りがした)

さっぱりした冷やししゃぶしゃぶなども出たが、ぼくは鮎の塩焼きが出たのが嬉しかった。
湯河原は海の近くといいながら山側に入った場所にあるので、海の幸と山の幸を同時に味わえるのがありがたい。古い木造の建物は最近の気密性がよすぎる建物と違い、山の冷気が静かに部屋にしみこんできて心地よい眠りを誘う。

翌朝の朝食には食べたかった鯵のたたきが、ふっくらと焼いた鯵のひらきとともに出た。さすがに地の魚であり、いまが旬でもあるので大変旨い。他にゆばや小田原のかまぼこなど。夕食以上においしいと感じ、家にいるときはヨーグルトと果物少々、コーヒー1杯のぼくがこれもほぼ完食したので妻は大いに喜んだ。今後は毎週一回、温泉旅行に行きなさいという。いまは腹に水が溜まった状態なので、腹の張りや背中、腰の痛みに悩まされているが、移動時間さえ快適に過ごす工夫をすれば、(例えば贅沢だがグリーン車を使うなどすれば)確かに家のなかで一日中ゴロゴロしているよりいいだろう。やっぱり旅はいいな、とつくづく思う。









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