ぼくがNHKを離れ、フリーになって最初の番組が明日夜放送される。
もっとも、放送枠は長く馴れ親しんだ「ETV特集」で、カメラマンは何人も替わったがよく知っている奴ばかり。編集はいつもの「ほっちゃん」で、ナレーターはここ数年、ぼくの番組のほとんどを担当してくださっている濱中博久先輩。プロデューサーは仙台時代からの同僚・鶴谷邦顕(さん)なので、まぁ、あまり代わり映えのしない気分(笑)ではあった。
番組は放射線防護学者の安斎育郎さんら「福島プロジェクト」の活動を追いかけたもので、去年春に放送した「終わりなき戦い」の言わば続編である。
去年の秋から撮り始めて一年がかりで作ったものだが、さすがに「終わりなき戦い・2」というわけにもいかず、「事態を侮らず 過度に恐れず」と題した。原発事故と対峙する福島プロジェクトの基本方針、「事態を侮らず 過度に恐れず 理性的に向き合う」からとった。
ぼくがこの番組で視聴者に知ってほしかったことの第一は、放射能汚染の「まだら模様」という他ない現実である。番組を見てくださると解るが、同じ「福島」といっても放射能汚染は地域によって全く違う。地上1mで測った空間線量率が1時間あたり0.1μSvを割り込むような地域、安斎さんの言葉を借りれば「京都の自然放射線による被ばくと殆ど変わらない」ところから、地上1cmで毎時100μSv近い強い汚染を残す地域まで様々である。それも事故を起こした福島第一原発からの距離に関わりなく、汚染された場所と殆どされていない場所が混在しているのが厄介だ。現実は「福島」の一言で一緒くたにできる状態では全くない。
放射線の「危険」を語るにしても、あるいは逆に「安全」を語るにしても、「福島」という大括りの主語で語るのでは現実離れした議論になる。最近、原発事故の「安全」と「危険」に関する論議が、ひどく大雑把に両極化している気がしてならない。
番組は放射線防護学者の安斎育郎さんら「福島プロジェクト」の活動を追いかけたもので、去年春に放送した「終わりなき戦い」の言わば続編である。
放射線防護学者・安斎育郎さん(76)
GPSと結んだ線量計を持って歩きまわり、空間線量を面的に把握する。
去年の秋から撮り始めて一年がかりで作ったものだが、さすがに「終わりなき戦い・2」というわけにもいかず、「事態を侮らず 過度に恐れず」と題した。原発事故と対峙する福島プロジェクトの基本方針、「事態を侮らず 過度に恐れず 理性的に向き合う」からとった。
飯舘村の除染廃棄物仮々置場での調査風景
ぼくがこの番組で視聴者に知ってほしかったことの第一は、放射能汚染の「まだら模様」という他ない現実である。番組を見てくださると解るが、同じ「福島」といっても放射能汚染は地域によって全く違う。地上1mで測った空間線量率が1時間あたり0.1μSvを割り込むような地域、安斎さんの言葉を借りれば「京都の自然放射線による被ばくと殆ど変わらない」ところから、地上1cmで毎時100μSv近い強い汚染を残す地域まで様々である。それも事故を起こした福島第一原発からの距離に関わりなく、汚染された場所と殆どされていない場所が混在しているのが厄介だ。現実は「福島」の一言で一緒くたにできる状態では全くない。
飯舘村。来春に予定される帰還を前に除染作業が進んでいる。
放射線の「危険」を語るにしても、あるいは逆に「安全」を語るにしても、「福島」という大括りの主語で語るのでは現実離れした議論になる。最近、原発事故の「安全」と「危険」に関する論議が、ひどく大雑把に両極化している気がしてならない。
まず価値判断抜きに現実を客観的に見つめることから始めよう、という安斎さんらの主張にぼくは強く共感をした。いくら低線量被ばくの危険性をめぐる空中戦を戦わせていても、置き去りになるのはそこで暮らす住民たちなのである。客観的にみれば汚染の少ない地域で生活する人たちですらどれだけ日々不安に呵まれているかは、他の地域の人たちの想像を絶するものだろうと思う。
そして、それは、いくら政府や東電、専門家が「安全」を叫んでも解消はされない。それだけの不信感を残したのが福島第一原発の事故に他ならないから。
もうひとつ伝えたかったのは、帰還困難区域など線量がいまなお高い地域に暮らす人々の思いである。福島第一原発から30km近く離れているにも拘わらず、強い汚染に晒された浪江町津島。そこで生活してきた今野秀則さん(68)はぼくのインタビューに答え、次の言葉を執拗なほどに繰り返した。
「地域の生活の一切合切を奪っていくのが原発事故なんです」
津島はいまも帰還困難区域に指定されたままで、人が住めるようにする除染計画すら具体化していないのが現実である。それでも、原発事故の被害は「残存する放射能汚染」だけではない。例え放射能汚染の問題を早期に解消できたとしても、二度と元には戻らないものがある。
全国に50基を超える原発を抱えた日本列島の住民、むしろ福島以外の人たちに一人でも多く見てほしい番組だと思っている。
そして、それは、いくら政府や東電、専門家が「安全」を叫んでも解消はされない。それだけの不信感を残したのが福島第一原発の事故に他ならないから。
もうひとつ伝えたかったのは、帰還困難区域など線量がいまなお高い地域に暮らす人々の思いである。福島第一原発から30km近く離れているにも拘わらず、強い汚染に晒された浪江町津島。そこで生活してきた今野秀則さん(68)はぼくのインタビューに答え、次の言葉を執拗なほどに繰り返した。
「地域の生活の一切合切を奪っていくのが原発事故なんです」
津島はいまも帰還困難区域に指定されたままで、人が住めるようにする除染計画すら具体化していないのが現実である。それでも、原発事故の被害は「残存する放射能汚染」だけではない。例え放射能汚染の問題を早期に解消できたとしても、二度と元には戻らないものがある。
全国に50基を超える原発を抱えた日本列島の住民、むしろ福島以外の人たちに一人でも多く見てほしい番組だと思っている。
ETV特集
どうしようも無い泥沼に入り込んだような切ない気分になった。
返信削除力まずに問いかける良い作品になっている
誰もが見られる時間帯に再放送したらいい、ご苦労さんでした。次作を待つ
ありがとう。
削除まだ気力、体力ともにあるので
次のお座敷が掛かればいいのだが…。
前略 録画視聴しました。私は放射能漏れ事故の最大の問題は市民の土地への愛着を排除させることにより、地域社会を崩壊させることと理解し、国家権力の非常さと非道さを改めて理解。toriiyoshiki様と安斎育郎様におかれましては真摯な番組を制作して下さり、感謝いたします。私も貴方がたの次回作に期待を。草々
返信削除ありがとうございます。
削除(御礼が遅くなってしまいました。)
福島原発事故がもたらした最悪の災厄は、
ある意味で計測可能な放射能汚染である以上に、
数量的な把握が不可能で対策すら立てようがない
地域社会の崩壊とその歴史の断絶ではないかと思います。
再稼働を急ごうという動きが目立ちますが、
万一の場合には二度と取り返しがつかない事態に立ち至ります。
その現実を一人でも多くの人に理解してもらえれば、と思っています。
遅ればせながら 再放送 見ましたよ。
返信削除タイトルに すべてが こめられてますね。
安斎先生。。
超ホットスポットでは!
>現実は「福島」の一言で一緒くたにできる状態では全くない。
今の日本は 復興五輪 唄ったりしているんですがァァァ
福島プロジェクトの皆さんが わりと高齢だし。。
う・・・ん・・・ 。 ほんとに 大変な。地道な作業。
最後に 和尚さん、 チラッと 映ってましたね?
いつもありがとうございます。
返信削除(御礼が遅れて申し訳ないです。)
平均年齢が70歳近い方々がああして頑張っているのを見ると、
還暦かそこらで老け込んだ気分になっていられませんね。
可能であれば、
今後も年に1本くらいでいいから、
飽きず、倦まず、「福島のその後」を伝えていきたいと思っています。