番組「“復興”はしたけれど」完成

21日放送のETV特集、
「“復興”はしたけれど」が完成した。
神戸市西部の新長田再開発をテーマにした番組だ。
去年11月、
初めて新長田を訪れたのがきっかけで、
ロケもなんやかやで半年以上続けていたことになる。

おりしも今日、
日本の人口の1/4が高齢者になったニュースを聞いた。
先日もオリンピックについて書いたが、
ぼくは少子高齢化で人口が減っていく日本が、
この先、経済成長することなどないと考えている。
短期的な「景気回復」はあるにせよ、
中長期的には必ず衰退していくはずだ。
経済も社会もだんだん縮小していくのは間違いない。
このブログでも何度となく書いてきたことだが、
日本は「調和ある縮小」を模索すべき時にきている。
いま被災地である東北は、
震災前よりこじんまりとした地域社会の形成、
いうならば「縮小復興」への道を探らなければならない。
新長田のケースは、
残念ながら、東北にとっては絶好の「反面教師」である。


1995年、阪神・淡路大震災が起きたとき、
すでにバブルは弾け、経済の潮目が変わっていたが、
開発志向の「株式会社神戸市」は時代の変化を見損なった。
「縮小」どころか「拡大」の道をひた走ったのである。
少なくとも、
新長田再開発の商業スペースについては、
計画規模が過大だったと言わざるを得ない。
典型的な下町で
開発ポテンシャルもそれほど大きくなかった
新長田の地域性とは水と油の巨大開発計画であり、
20年近く経った今日まで様々な問題を抱えてきている。

今春、神戸市役所都市計画総局を取材で訪れたとき、
担当の方々とかなり率直な意見交換を行なった。
あなたならどうする?…と反問されて、
ぼくは「調和ある縮小」という年来の持論を述べた。
「縮小」は言い換えれば「衰退」に他ならない。
「衰退」を前提とした施策というのは、
行政という立場では
なかなか受け容れ難い考え方であったようだ。

番組にも出演して下さった
広原盛明京都府立大名誉教授(元学長)は、
神戸市とも縁の深い都市計画・建設分野の専門家だが、
やはり「調和ある縮小」の必要性を強調されている。
インタビューに答えて
「拡大を前提とした都市計画など、もはやあり得ない」
と明言されたのが強く印象に残っている。
ぼくが現場の取材を通して感じ取ってきたことが、
専門家の言葉で裏付けられたのは嬉しかった。

それにしても。
取材を始めて一年近く経つが、
この間の神戸市の姿勢の変化は著しかった。
当初は問題の存在自体を認めていなかったが、
現在では、
新長田再開発の現状は「異常事態」だと
明確に認めるに至っている。
再開発が問題を抱えているという認識を
地元の商店主たちと共有したうえで話し合いを重ね、
本気で事態の打開を目指しているようにぼくには見える。
番組は、そうしたこの夏の新しい動き、
6月に東北で放送した時点ではまだ明確ではなかった、
問題解決に向けた胎動も記録している。
いくらかではあるが、
将来の展望を提示して番組を終わることができたのは、
取材にあたってきた者として嬉しく思っている。


ETV特集

 “復興”はしたけれど
〜神戸 新長田再開発・19年目の現実〜

9月21日(土)夜11時 Eテレ(59分番組)

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