柳葉魚は♂に限る

釧路にいると、ぼくはよく働く。
きょうも三食自炊で、
朝から調理をしたり食器を洗ったりを繰り返していた。
今回は一緒に来てはいないが、
かみさんは釧路にくると(ぼくが働くので)楽だという。
彼女が老後、一年の半分を釧路で暮らしてもいいと同意したのは、
内心ぼくに「主夫」をさせる魂胆があるのかもしれない。

釧路にいると、ぼくはよく歩く。
家の近所に春採湖という湖がある。
湖のほとりには遊歩道があって、一周すると4.7km。
湖畔にあるホームセンターとUNIQLOでの買物を兼ねて、
午前中にぐるり一周してきた。
午後には30分ほど歩いたところにある和商市場まで買物に出た。
なんやかやで、
10kmとは言わないまでも、8kmかそこらは歩いたことになる。


和商の帰りに幣舞橋から見える夕景をカメラに収めた。
ぼくは釧路川に落ちる夕日が好きで、
32年前に初めてこの街に来てから
数え切れないほど多くの写真を撮ってきた。
この時期、釧路の日没は早く、
この写真は3時50分に撮影したものだが既に陽は家々の陰だ。
冬至には3時30分ごろに日が暮れるので、
一日があまりにも短く、ロケのときなど困ったものである。
釧路川の夕日は春分・秋分には橋からみて真正面の海に沈む。
夏は右のMOO(商業施設)の背後に、冬は左の家陰に落ちる。


この時期の釧路は天気がいいので、
陽が沈んだ後も空が青く残っているのが好きだ。

この時期に釧路に帰る大きな楽しみのひとつは、
生干しの柳葉魚が食べられることである。
柳葉魚は、
北海道でも釧路川、十勝川、鵡川・沙流川の水系にしか遡らない。
大群が一気に遡上することで知られており、
昔は柳葉魚が遡るとサイレンが鳴って、
川辺にある製紙工場などは臨時休暇になったそうである。
本州の居酒屋などで供されるシシャモが
本物のシシャモでないことは知られていると思うが、
この時期にだけ食べられる生干しは、
本物でもカラカラに乾いたものとは風味が違っていて格別である。


いつも魚を買う和商市場の丸栄田村商店で柳葉魚を20匹買った。
我が家は基本的に♂しか食べない。
「子持ちシシャモ」といって♀の方が値段が高いが、
身は♂の方が遥かに旨い。
上海生まれのかみさんも最近ではすっかり味をしめて、
「柳葉魚は♂に限る」などと生意気なことを口走るようになった。
半乾きのものを焼き過ぎないように焼いて食べると
口の中に季節感と幸福感が溢れる。
久しぶりに♀も食べる気になって5匹だけ♀を入れてもらったが、
やっぱり♂の方が美味しいということを確認しただけだった。
写真はすべて♂の柳葉魚で、体は♂が二まわりほど大きい。


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