淋しい秋


南相馬は今年は柿が豊作である。
去年は不作だったというが、その反動だろうか。
町のあちらこちらにたわわに実った柿の木が見られる。
柿はもう充分熟して、なかには地面に落ちている実も目立つ。
しかし、今年は、柿を食べる人がいない。
市役所は、
柿や柚子、枇杷などの果実を
食べたり出荷したりしないよう繰り返し呼びかけている。

南相馬の淋しい“実りの秋”を撮影しながら走っていると、
大木戸というところで庭の柿の木を切り倒した家を見つけた。
聞けば、来年以降も食べられるかどうかわからないし、
木に放射性物質が付着している可能性が強いので伐ったという。
それでも、
とりわけ甘い実をつける木だけはもったいなくて切れなくて、
2本残したという話だ。
この家には柚子も生っているが、
やはり食べられないまま放置されていた。
去年までは野菜もたくさん作って子どもたちに送っていた、
今年は何のはりあいもないと、金歯を光らせてお婆さんが云った。


このお宅では屋敷林も切り倒している。
家を囲んでいた杉や桧の木が枝も落とさないまま放置されていた。
杉の葉には放射性物質がつきやすい、
切って清々したとお婆さんはいう。
ただし、最近は杉材の値段が安いので、
伐採した木はほとんどお金にはならない。
従って、業者に支払う手間賃はすべて持ち出しになってしまう。
それでも、大木戸地区では5軒が相次いで屋敷林を切ったという。

南相馬市ではもうすぐ除染基本計画が決まる。
「年間1mSvを超えるところは国の責任で除染」という割には、
国の財政支援は極めて不充分で、
本当に実効性のある除染ができるのか危ぶまれている。

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