なんてったってヒカリモノ。


「ヒカリモノ」に目がないのである。
幼いころは〆鯖が食べられず、
寿司はいつも
「ヒカリ抜き」で注文していたのが嘘みたいだ。

例年、7月下旬になると、
行きつけの寿司屋「小笹寿司」がシンコを供する。
それを愉しみにしているのだが、今年は遅れた。
8月になって電話をしても「まだです」との返事。
出張続きでしばらく留守が続いて、
23日に顔を出したら漸くシンコにめぐり会えた。
愛知産だそうで、今年はいきなり一枚づけだ。
シンコもこれくらいの大きさになると
食べるのが勿体ないような愛おしさはないが、
味はやっぱり大きい方が美味しい。
鮮烈で、しかもしみじみと旨味が深い。

夏といえば、
釧路で秋刀魚が旨くなる季節だ。
先日も書いたが、
今年は水温が高く、漁模様が悪い。
それでも、秋刀魚は秋刀魚、
これがなくっちゃ釧路の夏はない。
先日の日記に書いた翌日、
かみさんの親戚が上海から来て、
夕食にはやっぱり秋刀魚を喰うことになった。
前日より10円安い一匹130円。
コンロの木炭の火が起こり過ぎていたのか、
脂が少ないとはいいながら
火に落ちた脂が盛大に燃えるためか、
皮が網に張りついてベロッと剥げ、
身も崩れ気味の情けない焼き上がりになった。
それに目をつぶれば、味は結構なものである。

きょう東京に帰ってきて、
荻窪駅前の「有いち」に顔を出すと、
秋刀魚のバッテラがメニューにあった。
「本場のから帰ってきたばかりで食べなくても」と
若い主に笑われたが、
こうした一手間かけた仕事は「本場」には少ない。
そのままでも充分旨いので、
塩焼きか刺身で食べてしまうからだ。
しかし、バッテラはまた別物で、
ヒカリモノ好きにはこれも堪えられない。
今年のように脂の乗りがイマイチの方が、
寿司にしたときは旨いのではないか。
スダチの薄切りが添えてあって
一緒に食べると鼻と舌が同時多発的に幸福になる。

明日は大阪に出張だから、
今度は阿倍野の「明治屋」で
「きずし」(鯖の酢びたし)を食べるとしよう。

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