東京・名残の桜



嫌なことがあって、気分がクサクサしていた。
せっかくの休日だというのに、
何をする気も起きない。
めしも食わず、家のなかでぼんやりして。
鬱の一歩手前というところだったかもしれない。

午後、少しだけ気を取り直して、歩く。
家のそばの善福寺川。
桜がきれいなところだが、
今年はもうすっかり盛りを過ぎて、葉桜である。








盛りを過ぎた桜というのは物哀しいものである。
しかし、桜を見ていると、
次第に気持が鎮まっていくのを感じる。
桜には、どうやら鎮静効果があるらしい。
絶対に許せないと思ったことも
なんだかちっぽけなことに思えてきた。









桜は…その盛りにおいてすら決して陽気ではない。
桜は陰の花である。
沈欝で、どこか死を想わせる。
しかし、その静けさが、
ささくれだった気持を癒してくれる。

渋谷まで出かけて、
妻に全身に鍼を打ってもらう。
下北沢でおいしい寿司を御馳走になる。
それで嫌なことは忘れた。
けっこう単純な性格なのかもしれない。



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